大人の本棚・こどもの本棚

アルジャーノンに花束を

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幼児なみの知能指数しか持たない32歳のチャーリイは、人為的に知能を上げる臨床実験に、患者として参加し脳の手術を受けます。手術は成功し、チャーリイの知能は急上昇を始めます。チャーリイは進捗に合わせて報告を書くことになっており、その報告書によって彼の変化が語られています。働いていたパン屋ではもう働けなくなり、まわりとの人間関係も変わっていきます。しかしこの実験には欠陥があり、人為的に上げられた知能は急速に低下していくことに、知能が高くなったチャーリイ自身が誰よりも早く気づきます。チャーリイは、先行して実験を受けていた白ネズミのアルジャーノンの状態に、自分の将来を重ねます。

これはSFであり、ありえない臨床実験なわけですが、この本で語られていることは、知能の問題だけでなく、社会、アイデンティティ、人間関係、愛、性、老いなど実に多岐に渡っています。日本語の表記体系をうまく使って知能の違いを報告の文章表現に落とし込んでいる訳者の仕事も、素晴らしいと思いました。

推薦者:足立幸子(新潟大学教育学部教授。新潟アニマシオン研究会顧問。専門は国語科教育学・読書指導論。学校や家で子どもが読書をするための方法や環境について研究している。)

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