ロシア民話の再話絵本を紹介します。
ある日、お百姓のイワンが畑を耕していると、土の中から大きな青銅のつり鐘が出てきました。「神様からの授かりものに違いない」と思ったイワンは、村人たちとやぐらを建てて鐘をつるし、お祭りのたびにその鐘を鳴らしました。
鐘の音は周辺の村むらにまで響き渡り、それを聞いた誰もが、生まれ変わったような、爽やかな気持ちになる、イワンが見つけたのは、そんなふしぎなつり鐘でした。
この噂を聞きつけた皇帝がつり鐘を奪おうとしますが、つり鐘は急に重くなって、びくともしません。怒り狂った皇帝は、二度と鐘が鳴らないように、つり鐘をこなごなに打ち砕いてしまうのです。
みどり色のつり鐘と皇帝や兵隊、つり鐘をのせた荷車を引く馬や牛たち…独特で迫力あるタッチの挿絵がページいっぱいに広がり、読んでいる私たちもその場にいるような感覚に包まれて絵本の世界に惹きこまれます。
翌朝、その年はじめての雪が降りだすなか、つり鐘のかけらを元の土にかえそうとイワンが畑に行ってみると…思いもよらぬ光景に驚きます。
最終ページは「そりを はしらせると、ちいさなすずは ゆきに おおわれた 村むらに りんりんと なりわたるのでした。」とあり、ふしぎで幸せな結末が心に響きます。クリスマスの頃に読みたくなる一冊です。
(1980年に偕成社から出版された中村浩三さん訳は絶版です。2023年に好学社から武本佳奈絵さんの新訳で復刊されました。日本語訳の違いを読み比べるのも興味深いです。)
推薦者:有本 教子(新潟県立図書館司書。2女1男の母。)
推薦者:有本 教子(新潟県立図書館司書。2女1男の母。)
新潟県立図書館のホームページにBSNキッズプロジェクトの「大人の本棚・こどもの本棚」で紹介された本のリストが紹介されています。こちらもどうぞご利用ください。
※BSNキッズプロジェクト事務局より:偕成社「みどり色のつりがね」は、すでに在庫がありませんが、新潟県立図書館に所蔵されています。