“図書館で本を借りる” それは今の私たちにとって、あたりまえのことですよね。でも昔は、子どもは図書館に入ることもできませんでした。
今から120年ほど前、幼いころからお話が大好きで、図書館学を学んだアメリカの女性アン・キャロル・ムーアが、ニューヨークの図書館に“児童室”を作りました。
小さな家具をそろえ、有名な画家の絵を飾ったすてきな部屋には、選び抜かれた本が並び、子どもたちは本を借りたり、お話の会を楽しんだり、わくわくする時間を過ごせるようになったのです。
移民の子も貧しい子も一人の人として大切にされ、自由に本が読める児童室の誕生は、まさに草分けとなる画期的な出来事で、子どもたちはどんなに嬉しかったことでしょう!
本書は、強い意志と情熱と行動力をあわせもち、子どもと本を愛したムーアの伝記絵本です。現在子どもの図書館で働く司書の中には、ムーアの志を継ぐ人がたくさんいます。子どもたちが本を通して、広く深く実り豊かな体験をしてほしいと願い、地道に活動を続けています。
田村 梓(新潟市の小学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、30年になりました。)