スイスの山の村に、ウルスリという男の子が住んでいました。とんがり帽子や洋服は、お母さんの手作り。お父さんもいろんなものを作ってくれます。ウルスリも牛やヤギの世話、水くみなど、毎日せっせとお手伝いをしています。ウルスリを見たら、誰だって好きにならずにいられません。
3月、待ちに待った鈴行列のお祭がやってきます。男の子たちが鈴をふり鳴らして村をねり歩き、冬を追い出し春を招くお祭です。 ウルスリは大きい鈴を借りて、行列の先頭になりたいと思っていました。ところが手にしたのは、一番小さな鈴。がっかりしていると、山の夏小屋に大きい鈴がかかっていたことを思い出しました!
ウルスリは一目散に山へ。深い森もせまい橋も、積もった雪だって平気です。ところがやっと山小屋についた時、夕日が沈んでしまいます。ウルスリは鈴を見つけられるのでしょうか。
元気いっぱいのウルスリの悲しみと喜び、お父さんお母さんの愛情が、まっすぐに伝わってくる物語絵本です。スイスの国民的芸術家カリジェは、人々の気持ちだけでなく、雪山の夕景色や村の暮らしを、透明感のある美しい水彩で描いています。
スイス南部の村では、今もこのお祭“チャランダマルツ”が行われ、近年は女の子も参加できるようになったようですよ。
田村 梓(新潟市の小学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、30年になりました。)