SDGs de はぐくむコラム

第36回信濃川河岸段丘ウォーク

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毎年4月29日に、信濃川河岸段丘ウォークのイベントが開催されます。私たち研究室も毎年のように参加しています。大会が第36回目となる今年、私たちは津南町から小千谷市までの50kmコースにチャレンジしました。参加者は大学院生7人と学部生2人、そして私の計10人です。今回のコラムでは、スタートからゴールまでの様子を記しながら、なぜ学生たちがこの大会に挑戦するのか、そして何を得たのかを感じ取って頂けたらと思います。

朝6時30分。津南駅をスタートです。学生たちは久しぶりに早起きだったようで、出発前は随分と眠そうな表情をしていました。とりあえずみんなで眠気覚ましの準備体操を行い、気合を入れなおしてのスタートです。今年も50kmコースにはたくさん参加しています。合図とともに各地から集った参加者と一斉に歩き始めました。天気の良さも手伝って、気分が高揚する感覚を強く得た瞬間でした。

そして歩いてわずか3kmほどです。学生の一人が早速、足裏に痛みを感じてしまったようです。ここから長い道程の始まりです。結局この学生は30kmほど歩いたのちに棄権となるのですが、道中はみんなに励まされながら歩いていました。これこそがまずひとつの参加することの意味でもあります。チームを形成するためには5段階の過程があるといいます。このことをチームビルディングにおける5段階プロセス(タックマンモデル)といいます。このプロセスには以下があります。

① 形成期:チームが作られ始めたばかりの段階
② 混乱期:対立や仲たがい・抵抗がある段階
③ 統一期:お互いの価値観や考え方への理解が深まり
安定したチームへと統一されていく段階
④ 機能期:チームとして機能している段階
⑤ 散会期:プロジェクトの終了などでチームとしての活動が終わる段階

大学教育における研究室活動での4月といえば、チームが作られはじめたばかりの形成期に相当します。形成期はメンバー同士の理解が不十分であったり、チームの目標が不確かであったり、チーム内に少なからずとも緊張感がある状況です。この段階はお互いに様子を見たり、遠慮しながら互いのことを探り探り知っていったりする段階といえます。
この段階で重要なことは、お互いのことをよく知ることです。どのような状況で、メンバーが何を考えて、どのように動くのか、お互いを知ることが大切です。
ということは、今回のようなウォーキング大会はメンバー同士のこと知る機会になるということです。疲れが見えてきたメンバーをサポートする学生がいたり、それでもマイペースに歩く学生がいたり、最後まで笑顔でムードメーカーに徹してくれる学生がいたりと、指導教員の私も普段とは違う学生の一面を見ることができたのは大きな収穫でしたから、学生同士ならばなおさらです。こういう時間がお互いを知る機会になるということです。

津南町を抜けて十日町市に入りました。宮中ダムでは研究室の学生たちが考案したparty体操でリフレッシュです。10kmも歩けば日頃の運動不足がそれぞれの弱点となって表出するもので、それを体操で和らげようと学生たちが主体的に実践してくれました。他の参加者からは物珍しそうに見られたものの、やはり体操は気持ちが良いです。十分なリフレッシュとなりました。
そしてコース途中にある給水所には助けられました。こちらはボランティアスタッフのみなさんからサポートしてもらいました。スタッフみなさんの明るい声がけがどれだけ救いになったことか。元気をいただけたおかげで、また一歩を進めることができるのでした。

小千谷市に入りました。一番印象に残っているのは山本山です。おそらく50kmコース参加者の多くが一番の難所と回答するのが山本山であろうと予測します。いよいよ歩いた距離も40kmを超え、追い討ちをかけるように心臓破りの坂が待ち受けているわけです。そしてこれがなんともきつい坂です。みんなで励まし合いながら歩かないと心が折れてしまいます。ファイトー!いっぱつ!なんて言って歩くのは私だけでしたが、それぞれが思い思いに気合を入れて歩く姿が印象的でした。

ゴールが見えてきました。
実は私たちのグループは大幅に制限時間をオーバーしてしまいました。
最後は小千谷市のスタッフから先導していただきながらゴールを目指したのですが、到着したのは制限時間から1時間半遅れてのことでした。最後まで寄り添っていただいたスタッフのみなさんには感謝しかありませんし、疲労困憊でしたが、これまで以上に思い出に残るウォーキング大会となりました。

さて総括です。
ウォーキング大会を終えて2ヶ月が経った現在、参加した学生たちはそれぞれのプロジェクトに従事しています。授業の他に研究活動にも取り組んでいます。おそらくマルチタスク状態で毎日を過ごしていると思いますし、毎日を過ごす中には悩みもあると思います。しかし充実した学生生活を過ごすことができているのは仲間の存在があるというのです。その仲間とは今回一緒に50kmに挑戦した仲間のことです。あの日を境に、先輩後輩関係なく、思っていることを話し合っている姿を見るようになりました。一緒に食事に行くような機会も増えているようです。ある研究報告では、チームでプロジェクトを進める際に、メンバー同士の食事時間に仕事以外の会話ができることがプロジェクト成功の鍵になるといいます。同じように学生たちも一緒に食事をする時間が増え、何気ない世間話で盛り上がるというのですから、似た感覚があるのかもしれません。
また、先ほど触れたチームビルディングの5段階プロセスにある、統一期から機能期への移行にはイベントなどで時間を一緒に過ごすことも一つの方法だといいます。メンバーが一緒になって大きな困難を乗り越えることが、チームビルディングの手法となっているとしたならば、やはり今回の信濃川河岸段丘ウォーキング参加には大きな意味を持っていたことになります。
学生たちは、確かに疲れたと話していましたが、来年もチャレンジしたいとも話しています。それはメンバー間の凝集性を感じたからだと思っています。その成功体験が次のチャレンジへと促すのだとしたら、私からも来年度の学生たちにもこういう機会を提供していきたいと思います。
最後に、運営スタッフの皆様には深く感謝いたします。皆様の存在がなければ大会自体の運営がなりたちません。当日は暑くて大変だったと思います。本当にありがとうございました。来年もお会いしましょう。

余談ですが、ウォーキングの前日は飯山線で十日町市まで向かい、市内の旅館に一泊しました。到着したのが17時だったので、すぐに市内の飲食店で夕食にすることにしました。紹介いただいたのはIKOTEという名前の“せいがい造り”が特徴的なお店でした。地域でとれた旬の食材を使った食事ができるというので私も学生たちも心躍りながら向かいました。4月下旬のお話なので、もちろん目的は山菜です。お店に到着するやいなや、山菜料理を片っ端からお願いしたのをよく覚えています。木の芽を食べることができたのは感激しましたし、その木の目を初めて食べるという学生がいたのも驚きました。こういう味のひとつひとつも思い出になるのです。そしてまた、この味を求めて十日町まで足を運ぶのだと思います。

 

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
6月10日は、新潟大学人文社会・教育科学系准教授 村山敏夫さんです。

この記事のWRITER

村山 敏夫 (新潟市在住 新潟大学人文社会・教育科学系准教授)

村山 敏夫 (新潟市在住 新潟大学人文社会・教育科学系准教授)

1973年 十日町市生まれ。新潟大学大学院修了。新潟大学SDGs教育推進プロジェクトに取り組み、SDGs未来都市妙高普及啓発実行委員会委員長、新潟市SDGsロゴマーク選考会委員長を担当。出雲崎町、上越市など地域と連携した教育・健康・パートナーシップの仕組みづくりも担う。
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