SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年の国連サミットで採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に初めて記載されました。「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際社会共通の目標」のことで、未来から遡る「バックキャスティング思考」で作られています。
アメリカのアポロ計画もバックキャスティング思考で作られています。1961年にアメリカの第35代大統領ジョン・F・ケネディが演説で「10年以内に人間を月に着陸させ安全に地球に帰還させる」と目標を提示しました。それを受けて、アポロ計画関係者は「10年以内に月面着陸」という明確な「目標」に向かってアクションを起こしました。1969年に宇宙船アポロ11号から2名の宇宙飛行士が月面に着陸し、人類初の月面着陸を成功させましたが、アポロ計画がこの目標を達成させることができたのは「バックキャスティング思考」によって必要なイノベーションを興したからです。
とても壮大な話で、自分には関係ないと思うかもしれません。しかし、このバックキャスティング思考はとても重要な考え方で、様々な場面で活用できます。では、どんな考え方でしょうか?バックキャスティング思考とは、未来のある時点(起点)に目標を設定し、起点から現在を見つめ、目標に到達させるためにはどのような挑戦をすれば良いかを考える思考法です。SDGsは2030年を「起点」として目標を設定し、目標に向かって解決策を実行しています。
一方、「今」を起点として未来を探る方法を「フォアキャスティング思考」と言います。フォアキャスティング思考は、実際に直面している問題を解決しながら未来に向かって進むので、バックキャスティング思考とは反対の思考法と言われます。フォアキャスティングは現状を踏まえた上で今からできることをするため、直面している問題に迅速に対策を講じることができますが、具体的な目標が定まっていないため、どのような未来になるか想像ができません。
身近なことで例えてみましょう。私事ですが、最近、スマートフォンを見る機会が増えたからなのでしょうか、少し視力が落ちて、車の運転用にメガネを購入しようか迷っています。フォアキャスティング的に言うと、「メガネをかけて視力を矯正する」となります。一方、バックキャスティング的な思考で考えると「20年後も今の視力を維持する」となります。すると、20年後の目標に向かって視力を落とさないために何をしたらいいかを考え、行動することになります。その結果、画期的な方法が見つかるかもしれません。自分と同じように悩む人々のためにもなるので、自分だけでなく他人にも良いし、イノベーションの創出が利益をもたらすかもしれません。つまり「三方よし」です!
SDGsでのバックキャスティング思考の起点となる2030年には、我々の世界は変革し、国際社会共通の目標に到達するはずです(現実は厳しいけれど・・・)。SDGsを原動力とし、バックキャスティング思考で一緒にイノベーションを興しましょう!
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
7月2日は、勝身麻美さん のお話をお楽しみください。