SDGs de はぐくむコラム

生き物が集まってきた!一歩一歩 みんなで小さな自然再生

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現在、世界では年間4万種類もの生物が絶滅していると言われています。単純計算で毎日100種以上、しかも絶滅スピードは加速し続けており、約6,600万年前の恐竜の大量絶滅以来の生物の大量絶滅時代を迎えています。新潟県でも現在1,000種類以上の生き物が絶滅危惧種に指定されています。里山の身近な環境に見られるタニシやメダカも現在絶滅危惧種。身近な里山でも生き物の絶滅というのは遠い世界の話題ではないのです。

SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」では、陸上の生物多様性の重要性やその保全について位置づけています。この目標達成に向けて、私たち一人一人はどんな行動が出来るのでしょうか。キョロロでは現在、市民参加型の生物多様性保全活動「里山の生き物サポーターズ」というイベントを毎月開催しています。「里山の生き物サポーターズ」は里山の田んぼ、ため池、森、草地をフィールドにした里山管理活動を通して、みんなで楽しく生き物が暮らしやすい環境の創出や維持を目指しているものです。

その中の一つ「水辺ビオトープづくり」では、耕作放棄されていた田んぼ跡を水辺に戻し、いろいろな生き物が暮らし、観察できる環境づくりを実践しています。作業ではスコップで田んぼ跡の地面を掘り下げ、水がたまったり流れたりする環境を作ります。何年も放置されてきた田んぼ跡には大きく成長したススキの株がたくさんあり、掘り出し除去するのはなかなかの力仕事でした。参加者の皆さんとは「こんな水辺をつくってみたらどうだろう」「こんな生き物が集まってきたらいいな」と、この小さな自然再生の目指したい将来像を共有しながら、活動を継続していきました。

水辺ビオトープづくり「里山の生き物サポーターズ」

そして活動2年目となったこの春、このビオトープではうれしいニュースがありました。小さいながらも水辺が再生されたことで、「ニホンアカガエル」「クロサンショウウオ」といった両生類の産卵が確認されたのです!継続して活動に参加されている皆さんにとっても、とてもうれしい出来事となりました。カエル以外にも、オニヤンマのヤゴ、コオイムシといった水生昆虫も見られ、確実に生き物の種類や数が増えてきています。また掘り起こした土の中で眠っていたスミレのタネが発芽し、植物も含めた生物多様性の再生につながってきています。「生き物を守りたい」という一人一人の願いと行動が、少しずつ効果を伴ってきている、そんな実感につながったうれしい出来事でした。

みんなでつくった水辺ビオトープでニホンアカガエルの産卵を確認

先日4月の活動では参加した子ども達と一緒にこのビオトープの名前も考えました。ついた名前は「みんなのワクワクビオトープ」。みんなで作り、そこにいろんな生き物が集まり、ワクワクする観察が出来る、そんな願いが込められています。「里山の生き物サポーターズ」では、一歩一歩、今年も様々なフィールドで小さな自然再生をみんなで楽しく継続していきます。里山に関わる一人一人の行動が、里山の持続的な暮らしと生物多様性のつながりの実感に結び付き、里山の生物多様性の保全やその達成に向けた教育資源となることを期待しています。

水辺ビオトープに現れたニホンアカガエル

キョロロにお越しの際は、せひ「みんなのワクワクビオトープ」をのぞいてみてください!どんな生き物が集まっているでしょうか。

 

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
4月29日は、越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員の小林誠さんです。お楽しみに!

この記事のWRITER

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

1980年、長岡市生まれ。北海道大学大学院環境科学院博士後期課程修了(環境科学博士)。大学時代は北海道をフィールドに北限のブナ林を研究。現在、十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ学芸員。里山の生物多様性をキーワードに教育普及、体験交流、観光や産業などの側面から、地域博物館を活用した地域づくりに挑戦中。2児の父親。
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