東京の自宅近く、歩いてすぐのところに、小さな公園がある。
借りている駐車場から自宅へは、必ずこの公園の横を通る。
真ん中に象のすべり台があり、こういった所はよくそう呼ばれるように「ぞうさん公園」と呼ばれていて、近所の子どもたちからは、「ぞー公」と呼ばれている。
都内でも郊外のせいか、今どき珍しく「ぞー公」では朝から夕方まで、どの時間帯でも子どもたちが遊んでいることが多い。子どもたちの楽しそうな声を聞きながら、その横を往復すると、なんだか明るい気持ちになれる。
我が家の娘2人がまだ小さい頃は、僕も一緒にここで遊んだ。下の娘が初めて自転車に乗れた思い出の公園も、この「ぞー公」だった。
娘たちは小学生の頃、友だちとよくここで遊んでいたし、中学生になっても時々「ぞー公」で友だちと話し込んだりしていた。
僕にもそんな「ぞー公」のような公園があった。
上越市の実家近くの公園がそれだ。大きさも「ぞー公」くらいで、よくある町内の普通の大きさの公園だった。
小5の時にその町内に引っ越して来てから、僕は毎日のようにここで遊んだ。今思い出すと「よく飽きなかったな」というくらい、なんでもないこの小さな公園で友だちと遊んだ。夏休みの朝のラジオ体操もここだったし、キャッチボールなど町内野球の練習もここでしていた。ネットを張って、ボールが近所の家に行かないようにと練習していたが、今だったら、すぐに禁止だろう。
僕らはよく「今日、どうする?」と言って公園に集まっては、室内でできるはずのゲームなんかも、なぜか公園でやったりしていた。もちろん公園ならではの「鬼ごっこ的な遊び」や、その場でできる適当な遊びも楽しんだ。みんな大声で笑ったり、時々、ささいなどうでもいいことでケンカになったりもした。だけど、今になって思えばそんな様々な経験をさせてくれたこの公園は、僕らの大事な成長の場だったのかもしれない。大声を出したり、ボールを使っての遊びなど、現在の公園では禁止になっている所が多い。
もちろん近隣の住民の方への配慮や、危険を伴う遊びについてはきちんとルール化されることが望ましいが、久しぶりに立ち寄った公園に誰もいない様子を見ると、なんだか寂しい気持ちにもなってしまう。
僕の思い出の公園と言えばもう一つ、当時「高田公園」と呼んでいた現在の「高田城址公園」がある。お花見などで県内各地の方も多く訪れる公園だが、幼い頃、僕は両親とこの公園によく遊びに来ていた。町内の公園とは違い、僕にとってはとても大きな公園だった。その当時、「高田公園」は動物園のように、たくさんの動物がいた。サルやシカに、トラもいた。そんな動物を一通り眺めては、噴水の前で休憩し、滑り台で遊んだりして家に帰った。
なんでもないそんな1日も、今思えば、かけがえの無い時間だった。
現在の「高田公園」、いや「高田城址公園」には、もう動物はいない。滑り台も違った種類のものになっている。それでも、時々ここに来るとなんとも懐かしく、胸の奥がモゾモゾと少し痒いような気持ちになるのは、それだけ僕にとって大事な場所だったのだろう。
実はこの公園の中にある小林古径記念美術館で、9月14日から11月24日まで展覧会を開催することになった。この場所で開催できるということが、とても嬉しい。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
9月7日は、「ハレッタ」のキャラクターデザインを手がけた、イラストレーターでアートディレクターの大塚いちおさんです。お楽しみに!