グーテン ターク、お元気ですか! 今回も3年間のドイツ・ハンブルグ日本人学校長時代に感じたことからお話しします。ドイツでは、「小学校は基礎教科を勉強するところ」と割り切っています。道徳のような授業はありませんし、「躾は家庭で」と考えています。姿勢よくしましょうとか鉛筆の持ち方などは指導しません。
ある日、ハンブルク市内のバス停で、車椅子に乗って待っている人を見かけました。バスが停車すると車体横のドアが開き、乗っていた若者がさっとスロープをセットしました。もう一人の若者は前方から降り、車椅子を押してバスの中へ入れていました。東京で、この全ての行為を運転手さんが一人でやっているのを見たことがあります。乗客はただじっと見ているだけですし、中には時計を見ながらイライラした表情を見せる人もいました。
ドイツではこの他に、歩道橋の前で乳母車を停め、困っている母親を見かけました。そこに二人の若者が近づいて、乳母車ごと持ち上げて階段を昇っていきました。母親はお礼を言い、若者たちは少しはにかみながら笑顔で去っていきました。私はとても爽やかな気持ちになりました。ドイツでは、「お年寄りや困っている人には優しくする」ということは特別なことではないのです。小さい時から、両親や周りの大人たちがやっていた後ろ姿をじっと見ていたのでしょう。「言葉だけでなく、行動で示す…」躾の基本です。そして小さいうちが大事なのです。
「ドイツには障害者教育という言葉もありません。」と、第一回で紹介したあの校長先生は話してくれました。少し障害を持った子も同じ教室で勉強します。障害が重い子には補助教員がつきます。「だって私たちが生きている社会でも、みんな同じように生活していますよね、学校も同じです。」、まさに目から鱗でした。
「どんなかんじかなあ」
今回、紹介する本は『どんなかんじかなあ』(中山千夏ぶん 和田誠え 自由国民社)です。
「ともだちの まりちゃんは めがみえない。そこで かんがえたんだ。 みえないって どんなかんじかなって。」と始まります。「しばらく めを つぶっていたら わかるかもね。うん、めを つぶってみよう。」皆さんもぜひ目をつむってください。どんな感じですか?その感じを大事にしてください。次のページで叫びます。「なんてたくさん いろいろな おと!!」そして次は、耳の聞こえない佐野君です、さあどう展開するのでしょう。