新潟県で初めての子ども食堂としてオープンした「ふじみ子ども食堂」が今年10周年を迎えます。10年継続したからこそ見えてくることがあります。

2019年 段ボール遊び
現在小学校6年生男子がボランティアに来ています。その子に「最初に子ども食堂に来た時にどんな風に思いましたか?」と聞くと、「え~覚えてないよ」。それもそのはず、彼が最初に来たのは保育園児で4~5歳くらいでした。食材が入っていた段ボールの中に弟と2人で入って遊んでいた姿を思い出します。

2019年 お片付け
でも、その頃から、子ども食堂が終わると掃除や片付けを手伝う子でした。時を経て5年生になった彼は、おばあちゃんがボランティアをしていることもあり、学校の後にランドセルを担いだまま子ども食堂に来てボランティアをしています。大人ボランティアとコミュニケーションを取りながら、始まる前のテーブルセッティングをして、注文を取り食事を運びます。時々ふざけて叱られることもありますが、小さな子どもたちの相手もしています。彼の家族が来ると合流して一緒に食事をして帰ります。最年少のボランティアです。
2023年4月コロナ明けに弁当配食から会食に戻った時に、以前ボランティアで来ていた大学生がお母さんになって子どもを連れて食事に来ました。小学生の頃参加者だった女の子が高校生になり「子ども食堂に来ていた時にとても楽しかったので、ボランティアに来ました」と言って来てくれました。
先日も高校3年生の男子5人がボランティアに来てくれたのですが、5人の中の一人が、小学生の頃に「ふじみ子ども食堂」に来ていた子でした。最初は分からなかったけれど、名前に見覚えがあったことと、小さかった頃の面影が残っていて、「ふじみ子ども食堂に来ていたよね」と聞くと、やっぱりその子でした。久しぶりの再会が嬉しかったです。

2017年 宿題
それがきっかけで、その高校生と、小学生の頃、子ども食堂で一緒に宿題したり、人生ゲームをしたり、藤見中央公園で汗だくになって群れて遊んでいたメンバーが集合。一人は大学生になり、一人は社会人として働いていました。成長した姿に10年の月日を感じました。
こんな風に、かつて「ふじみ子ども食堂」でボランティアをしていた学生や、ご飯を食べに来ていた子どもたちが、また来てくれるのは、10年間活動しているからだと思います。

2025年 小学生ボランティア
10年経ち、子どもたちは青年に成長しました。ところが、私たちボランティアは10年経って疲れの残る年代になりました。子育て真っ最中の元気なボランティアもいますが、大勢をしめるのは、高齢者と言われる年頃のボランティアです。気力はあれど体力がついてこないとか、子ども食堂の次の日は整体の予約を入れてあるという声が聞こえます。そんな現状に先行きどうしたものかと思っていました。でも、利用者だった子たちがボランティアとして一緒に活動してくれて、私たちは元気が出て嬉しかったです。
NPOを継続運営していくうえで、活動をどう次世代に繋げられるかが一つのハードルでもあります。ふじみ子ども食堂を利用していた親がボランティアに加わってくれたり、現在利用している小さい子を持つ親たちが、「時間が出来たらボランティアに入りたい」と言ってくれたり。今回のように利用者として来ていた子たちが、ボランティアに来るということは、地域の中で利用者から支援者への循環が出来てきているように感じました。
どのように今後その人たちが、子ども食堂に関わるかは分かりません。時代とともに活動形態を変えるかもしれません。役目を終えることもあるかもしれません。でも、月2回の開催でどれくらいのことができるのだろうと思いつつスタートし、開催ごとに地域のおばちゃん、おじちゃんたちが皆で考えながら、子どもたちの為にと自分たちが出来ることをし、それを地域の人たちが野菜や物品の寄付などで支え、積み重ねてきました。10年間そこに子ども食堂があることで、人が出会い、繋がり、世代交代しながら循環していくのかもしれないと感じた出来事です。

成長した子どもたちと
私たちの名称「にいがた子育ちステイション」の「ステイション」は、地域の中の安心して留まることのできる居場所としての「ステイ stay」と地域と居場所を繋ぐ場所「ステーション station」の造語です。地域の中の安心できる居場所でありたいという思いが込められています。スタートした頃、小さな子どもだった子たちが、安心して楽しく過ごせた場所だったからこそ、また顔を出してくれたのだと思うのです。名称に込めた思いが、少しかなったように感じる10年目です。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。6月7日は、新潟市在住 にいがた子育ちステイション理事長 /子育て支援ファシリテーターの立松有美さんです。お楽しみに!