SDGs de はぐくむコラム

博学連携が育む子どもたちの多彩な学び

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「森の学校」キョロロには、小中学校の生活科・理科・社会科・総合的な学習の授業で、多くの子どもたちが訪れます。子どもたちは季節ごとの里山の自然を周辺のフィールドで観察・学習したり、時には学芸員が学校に出向き学校周辺の自然を一緒に散策したりと、自分たちの暮らす地域の自然について体験的に学びを深めます。今の季節、授業でキョロロを訪れる子どもたちの多くは、スノーシューを履いて冬ならではの自然や春を待つ生き物たちを観察します。季節をとおして子どもたちの学びのテーマも実に多様です。このように学校教育における博物館等の積極的な活用、博物館と学校との「博学連携」は、学習指導要領においても子ども達の実践的な学び場として期待されています。

冬の森で自然観察

ため池での生き物の観察

キョロロの「博学連携」の取組みの一つとして「こども里山学会」をご紹介します。これは、十日町市の自然や文化・くらしについて、市内小中学校の児童・生徒が理科や社会、総合的学習の時間の中で学んだことや調査から分かったことを発表する、子どもたちが主役の学会です。

こども里山学会の様子 クイズでわかりやすく発表

子どもたちが地域の自然を守る大切さを伝える

こども里山学会では、各学校がキョロロで体験し学んだことを、また学校で学びを深めたことをまとめ、寸劇やクイズなど工夫を凝らした発表方法で、他校の子どもたちの前で成果を発表します。自分たちの地域の特徴を伝え合い、他校の子どもたちの発表を聞くことで、改めて自分たちが暮らす地域の特徴を知ることができます。また発表し、質問を受けることで地域の新たな気づきにもつながっていきます。指導を行う先生方にも他校の学習や活動を共有する場にもなっており、学びのネットワークが広がっていきます。

実はこの「こども里山学会」、キョロロ開館以来2019年(第17回)まで毎年開催してきましたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い残念ながら現在は休止中です。現在は少し形を変え、キョロロ館内でのミニ企画展「発信!わたしたちの地域自慢」として学習成果を毎年展示し来館者に見学していただいています。こども里山学会同様、「伝える」ことを意識した各学校の展示は、子どもたちの地域の自然を観察する視点や気づきの数々に満ちています。

ミニ企画展「発信!わたしたちの地域自慢」

こんな博物館と学校との「博学連携」は、SDGsのゴール4(質の高い教育)やゴール17(パートナーシップ)の実現に向けて、地域の子どもたちの幅広い視野と多様で実践的な学びの機会として期待されます。地域の博物館を教育の場として活用していただくことで、子どもたちが多様な学びを得る機会をこれからも支援していきたいと思います。

 

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
3月2日は、越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員の小林誠さんです。お楽しみに!

この記事のWRITER

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

1980年、長岡市生まれ。北海道大学大学院環境科学院博士後期課程修了(環境科学博士)。大学時代は北海道をフィールドに北限のブナ林を研究。現在、十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ学芸員。里山の生物多様性をキーワードに教育普及、体験交流、観光や産業などの側面から、地域博物館を活用した地域づくりに挑戦中。2児の父親。
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