生まれてから18歳まで上越市で過ごした僕にとって「ふるさと」は新潟県上越市だ。そもそも「ふるさと」なんて言葉を意識したのは、東京で一人暮らしを始めた時。各地方から東京にやって来た友人たちと最初に話す話題は、だいたい決まって地元のネタだった。「実家から最寄りのコンビニまで歩いて行けるのか?」「歩きじゃない。車で?何分?コンビニまでそんなにかかるの?」「え、そのファーストフードないのか」そんな話題でだいたい盛り上がる。
その中で上越市は、大都会ではないが、田舎自慢ができそうなほどの田舎というほどでもない。平均的な、程よい地方都市といったところ。その後も地元の話、生まれ故郷「ふるさと」の話題になる度、僕は愛情を込めて程よい地方都市、上越市のことを話した。
そんな僕が、東京で最初に暮らし始めたのは練馬区だった。それもかなりすみっこの方。当時は少し歩くと畑もあり、自然がある住みやすい町だった。4畳半の風呂なしアパートから僕の一人暮らしは始まり、その後何度か近所で引越しを重ね、気づくともう40年近く同じ町に住んでいる。
それだけ住んでいると、当然その町にも詳しくなる。「毎日のようにお弁当を買っていたお店も今はマンション」とか、「もうないけどけど、ここの町中華は美味しくて、よく通った」とか。一方では18歳の頃、僕が通っていた皮膚科の病院が今でも健在で、娘が時々通っていて親子2代でお世話になっているなんてところもあったりする。
イラストレーターとして仕事が増え始め、忙しさもピークになってきた頃、僕は渋谷に仕事部屋を借り、そこで仕事をするようになった。最初はまるで学生の一人暮らしのような小さなワンルームマンション。それでも仕事に集中できて、打ち合わせや納品、急な仕事の相談などの場合でもすぐに対応できた。なかなか仕事が終わらず、徹夜作業になると仕事部屋にそのまま泊まりこむこともよくあった。
その後、何度か引越しを重ね、今は1人の仕事部屋から、スタッフもいる事務所のような形になるが、気づけば25年以上渋谷という町にはお世話になっている。町との関わりは年数では測られないだろうが、自宅のある練馬も、仕事場がある渋谷のどちらも、僕が上越市で暮らしていた18年間を超えてしまった。何がそこを「ふるさと」と感じさせるかわからないが、それは時間だけではないように思う。
「生まれた町」「東京で暮らした町」「仕事している町」どこも僕にとっては大切な町で、「ふるさと」であってそれは「ホーム」なのだ。
「ホーム」と言える場所が3つある僕だが、僕にとってのサッカーの「ホーム」は川崎市等々力、川崎フロンターレのホームスタジアムだ。こちらも縁あって関わり始めたのは2013年、2014年からは川崎フロンターレファミリーアートデイレクターとして関わってきたから、もう10年以上チームに関わり応援していることになる。
そのフロンターレの試合を観戦し応援している時に、少し複雑な気持ちになる時がある。それはアルビレックス新潟との試合の時だ。東京で暮らしていても新潟県出身の意識は当然あるので、新潟で生まれ育った人たちがアルビを応援している姿をみると、もしかしたら自分もその中にいたかもしれない人生を少し想像してしまうのだ。
今週8月16日、そのアルビとフロンターレのJリーグの試合がビッグスワンで開催される。

昨年の実況中継、放送席にて
アルビの状況はもちろんわかっているが、フロンターレも負けられない大事な試合。実は、この試合を昨年に続き、BSNラジオの放送ブースからゲストとしてお話しさせていただくことになった。フロンターレの魅力やサッカーの楽しさを少しでも多くの方にお伝えできればと思っている。
大観衆で埋め尽くされたビッグスワン。夢のような舞台でこの2チームの熱い試合が行われることがとても楽しみだ。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
8月16日は、「ハレッタ」のキャラクターデザインを手がけた、イラストレーターでアートディレクターの大塚いちおさんです。お楽しみに!