SDGs de はぐくむコラム

一枚の服からサステナブルを考える

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みなさんは、普段着る服をどのような観点から選んでいますか?好みの色やデザイン、値段、素材など、重視するポイントは人それぞれにありますね。
では、いま着ている服のタグを見てみましょう。どこで作られたものでしょうか。クローゼットの中の服を見てみると、中国、バングラデシュ、ベトナム、日本…、いろいろな国名に出会うかもしれません。私たちが普段着ている服は世界中から、特にアジア各国から日本に輸入されています。遠い地で作られた服は、どのような過程を経て、私たちの手元に届くのでしょう。そもそも、服は何を材料に、どんな人たちによって、作られるのでしょう。

ベトナム、インド、中国、タイ、様々な国で作られています。

服を生産するには、まず原料が必要です。この原料生産における環境問題や労働問題がいま、地球規模で深刻なものとなっています。例えば、綿(コットン)の原料である綿花を育てるためには、大量の土地や水が必要ですし、ポリエステルであれば、その原料は石油や天然ガスです。いずれの資源も、私たちが暮らす地球上に無限にあるものではありません。綿花について言えば、栽培過程で農薬が大量に使われています。「コットンベルト」と呼ばれる綿花栽培が盛んな地域は、開発途上の国が多く、生産者に知識がなかったり文字が読めなかったりするゆえに、防護服やマスクを使わずに大量の農薬を散布している状況が起こり、健康被害が深刻だと言われています。さらに、大量の綿花を摘むために、子どもが働かされている現状があります。

最近、肌寒くなり、カーディガンをよく羽織るようになりました。1900円程度で買ったものです。原料生産にも、大量の資源や労働力を必要とし、さらには、輸入にたくさんのエネルギーやコストが使われているのもかかわらず、どうしてこれほど安価なのでしょうか。安価に抑えるために、何が(誰が)搾取されているかを考える必要がありそうです。2013年に、バングラデシュで、縫製工場が入ったビルが崩壊し、1000人以上の死者が出た事故がありました。この事故は、ビルの欠陥が見つかっていたにもかかわらず、収容能力を超えた人の収容や機械の稼働を進め、利益を優先したことが原因でした。そこで作られていた服は、どこで誰が着るものだったのでしょうか。バングラデシュ製の服は日本でもよく見かけます。遠い国で起こった事故は、「他人事」ではないような気がします。

さて、このような話ばかり続けていると、「服ってたくさん買わないほうがいいの?」「好きな服を選んではいけないの?」とジレンマに襲われそうですが、そんなことはありません。大切なことは、”問題に目を向け、未来のことを考えた選択をすること”だと思っています。
私は、昨冬に、農薬を使っていないオーガニックコットンを使用したフェアトレードのセーターを買いました。衣服の生産や消費における環境汚染や人権問題を知ったことは、自分の購買のあり方を見直すことにつながりました。お気に入りのセーターは、今年の冬も大活躍しそうです。自分が「いいな」と思って買ったものは、大切に長く着ることができますね。着なくなったときには、リユースやリサイクルといった「すぐに捨てない選択肢」も知っておくとよさそうです。

近年は、「サステナブルファッション」という言葉も注目され、企業もさまざまな取り組みをしています。持続可能な社会をつくるために、まずは知ることから。自分にとって身近な事柄をきっかけに、地球規模で起こっている問題に関心をもち、未来を変える行動をはじめてみませんか。

Rerun fairtrade&ecology(新潟市) 衣服から雑貨まで、フェアトレードの製品が豊富にそろったお店です。 (写真提供:店主 小川朝子さん)

(参考)
フェアトレード・・・安全で健康的な労働条件と子どもの権利を守る。生産者に公正な対価を支払う。(世界フェアトレード連盟 フェアトレードの10の基準より)

「ファッション業界の裏側」を知るためにおすすめのドキュメンタリー映画
『ザ・トゥルー・コスト 〜ファストファッション 真の代償〜』(2015年公開)

サステナブルファッションについて
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/ (環境省)

 

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
12月3日は、にいがたNGOネットワーク国際教育研究会RING企画副委員長の関 愛さんです。お楽しみに!

この記事のWRITER

関 愛(長岡市在住/にいがたNGOネットワーク国際教育研究会RING企画副委員長)

関 愛(長岡市在住/にいがたNGOネットワーク国際教育研究会RING企画副委員長)

高校教員時代に、日本国際協力機構(JICA)による教師海外研修に参加し、ブータン王国へ。その後も、国内や海外へ飛び回りながら知見を広げ、国際理解教育/開発教育の実践力向上を図ってきた。現在は、新潟県キャリア教育連携促進事業(出前講座)や総合学習コーディネーター等を通じて、学校の「外」から教育に関わりながら“持続可能な社会の創り手“を育むべく活動を展開している。旅好きな性格。家庭では、小学生男児の母として、子育てという「人生の旅」を楽しみ中。
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