世界の人口は年々増え続けています。国連の「世界人口推計2024年版」によると、2024年に約82億人だった世界の人口は、2080年代半ばには103億人でピークを迎え、2100年には約102億人になると見込まれています。国別に見ると、インドは中国を抜いて世界最多の人口を持ち、国際社会での存在感を高めています。一方で、日本では2008年をピークに人口が減少し続けており、2100年には5,000万人を下回ると予測されています。女性1人あたりの出生数も、長期的に人口を維持するために必要とされる2.1を下回っている現状です。

世界人口の推移
ここからは、私自身の意見も含まれることを前提に、お読みいただければと思います。
私は、先進国における、ある程度の人口減少は「自然な流れ」だと考えています。人口が今より少なくても、安心して暮らしていける社会はつくれると思っています。実際、日本は江戸時代の約260年間、3,000万人規模の人口で暮らしていました。一方で、現在の世界では、人口の増加によって食糧不足や環境問題が深刻化しています。人口が増え過ぎることもまた、別の課題を生み出します。確かに、人口が減ると、国内の消費が縮小し、生産性が低下し、労働力や税収が減り、地域の担い手が減って文化の継承が難しくなる、といった苦しい課題があります。しかし、技術の進歩やAI(人工知能)などのDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進によって、こうした課題の多くは乗り越えられる可能性があると感じています。

日本の人口の長期的推移
人口を増やすには、有配偶率(結婚している女性の割合)や有配偶出生率(結婚している夫婦の出産数)も関係してきます。ここで大切になるのは、「教育」と「ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良い状態にあること)」です。子どもを産み、育てるということは、奇跡のような出来事です。WHOが示す出産適齢期(15〜49歳)でも、40代に入ると妊娠は難しくなることを「教育」として伝えることが必要で、また「結婚」や「パートナーがいる」ことに前向きなイメージや憧れを持てるような社会の雰囲気をつくることも大切だと思います(結婚は地獄の始まりといった声が聞かれることもありますが・・・)。
私自身、長く不妊治療を続け、顕微授精も経験しました。卵子提供や養子縁組も考えましたが、今は「子どもをもたないことを、自分で選んだ」と言えるようになってきました。「お子さんは?」「残念だね・・・」「楽でいいよ!」といった言葉をいただくこともありますが、私は「誰もが自分に合った生き方を選べる社会であってほしい」と願いながら暮らしています。
だからこそ、私は「人口を増やすこと」ではなく、「ウェルビーイング」を高めることこそが大事だと思っています。多様な個人がそれぞれ幸せや生きがいを感じるとともに、その人のまわりにある地域や社会も、幸せや豊かさを感じられるような状態であり、その結果として「人口が増えた」という未来が訪れるのが理想ではないでしょうか?

ウェルビーイング(WB:Well-being)
国や地方自治体では、さまざまな少子化対策に取り組み、人口減少を緩やかにしようとしています。ここで大切なのは、「緩和」だけでなく、「適応」の両方の視点です。緩和としては、子どもを産み育てやすい環境を整えることや、移民政策(外国からの流入)、地方創生(都市から地方への流入)などが求められます。一方、適応としては、人口減少の影響を最小限に抑えるために、DXの推進(業務の自動化、デジタル技術の導入、AIの活用)、イノベーションの促進、高齢者支援の充実などをあわせて進めていくことが必要です。
人口減少の問題は、単に「人数」をどうするかではなく、私たち一人ひとりが人としてどう向き合い、どんな社会をつくっていくのかが問われていると私は考えています。多様な人々の「ウェルビーイング」を高めることこそが最も重要な課題であり、その積み重ねの先に、いつか自然と人が集い、共に幸せに暮らせる社会が生まれていく。私は、そんな未来を信じています。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。5月24日は、長岡市在住で長岡技大国際産学連携機構 特任講師/主任UEA の 勝身 麻美さんです。お楽しみに。