はぐくむコラム

情報社会 構えない子育てを

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皆さん、こんにちは。敬和学園大学の一戸信哉と申します。今回から「メディア環境と子育て」について、日頃、思っていることを書かせていただきます。

私はインターネットが一般に普及し始めた1990年代半ばに、研究者として活動を始めました。大学で教えるようになってからすでに20年。その間、メディアを巡る状況は少しずつ変化し続けています。私がiPhoneを使い始めた頃、「使いにくくないですか?」「画面が汚れますよね?」と、やや斜に構えていた学生たちが結構いたのですが、彼らのほとんどは、ほどなくしてスマホに乗り換えました。新しいものに拒否反応を示す人は、どの世代にもいるのですが、一般的には、若い人はどんどん新しいものを受け入れていきます。SNSの世界でも、InstagramやTikTokといった新しいサービスに、いつの間にか若者は手をのばし、しばらくしてから「今、◯◯がアツい」というような記事を見て、おじさんたちも試すようになるという構図が続いています。

この「未知の世界」の仕組みは、いつも「大人」を置き去りにして進んでいくので、それが子どもにどんな影響を及ぼすか、多くの大人は不安にかられています。子どもの頃経験したことがないわけですから、無理もありません。子どもたちがスマホやタブレットをすいすい使いこなすさまは、大人たちを驚かせます。自分たちとは異なるメディア環境が、なにか悪影響を及ぼすのではないか、心配にもなります。

もちろん、一般社会に子どもたちが開かれていけば、そこには「善意」とともに「悪意」が転がっていますし、そそのかされ軽い気持ちでネット犯罪に手を染める若者もいます。ネットやスマホの悪影響を指摘する専門家の意見を見聞きすると、「未知の世界」への不安が増幅されて、子どもたちを新しいメディア環境から引き離す力として働きがちです。

その一方、教育の世界では「主体的な学び」という言葉がよく使われるようになりました。AI(人工知能)への期待と不安の中で、人間にしかできない深い学びを実現しようということでしょう。そこまでは多くの皆さんが一致できるのですが、そこにICT利用が入ってくると価値観の違いがあらわれます。「なんでも検索して答えが出てくると思っている」という人は、ICT(情報通信技術)では「主体的な学び」など実現できないというかもしれません。しかし「検索すれば答えが出てくる」というのは、教育にとっては大きな転換です。検索して答えにたどり着ける程度のことを、今まで通りの時間をかけて学ぶ必要はないでしょう。「検索して答えにたどりつく」ための手順を覚えたら、あとは自分で情報収集し、集めた情報を精査し、「ネットではたどりつけない」未知の問題にどんどん迫っていくことができるようになるでしょう。

「ネットではたどりつけない」領域までたどりつくのは、実はそんなに容易ではないともいえます。「正解」を保証する「教科書」通りに学ぶだけで済まなくなれば、「正しさ」「確からしさ」について自分で考えなければなりません。それが難しいということは、「フェイクニュース」を巡る一連の問題を思い出していただければ、明らかだと思います。

情報を正しく見極められなかったために、偽の広告に騙される人は老若男女を問わず、少なくありません。本人が損をしたというだけではありません。騙され釣られた情報を「拡散」してしまったために、他人を騙す側に加担してしまうこともあります。

複雑化するメディアを私達はどう考えて、子どもに伝えていけばいいのか。私が日々悩み考えていることを、皆さんにお伝えできたらと思います。

この記事のWRITER

一戸信哉(新潟市在住 敬和学園大学人文学部国際文化学科教授)

一戸信哉(新潟市在住 敬和学園大学人文学部国際文化学科教授)

青森県出身。早稲田大学法学部卒業後、(財)国際通信経済研究所で情報通信の未来像を研究。情報メディア論の教鞭を取りながら、サイバー犯罪・ネット社会のいじめ等を研究。学生向けSNSワークショップを展開。サイバー脅威対策協議会会長、いじめ対策等検討会議委員長などを歴任。現在:敬和学園大学人文学部国際文化学科教授。
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