上越にＪリーガーがやって来た！

上越市の高田駅近くに、「ディグモグコーヒー」という焙煎所兼コーヒースタンドのお店を作ってから、上越市に滞在する時間が増えた。その日も、店の奥の焙煎スペースでコーヒー豆の焙煎をしていたが、僕はちらちらとスマホでサッカー中継を気にしていた。Jリーグ・川崎フロンターレに「ファミリーアートディレクター」という役職で関わっているから、フロンターレやJリーグの試合の時もそんな風に画面の選手の動きを追う時もあるが、その日は違っていた。それは上越高校サッカー部の大事な全国高校サッカー選手権、新潟県大会準決勝の中継だった。

焙煎しながらの応援も虚しく（もしかしたら焙煎しながらの観戦だったせいか…）結果は惜しくも敗退だった。だけど、上越地区から近い将来、全国高校サッカー選手権に進んでくれるのではないか、そんな期待が勝手に大きくなった。

実は、僕は、その直後に上越高校サッカーグランド行われる「上越スポーツフェスティバル2023（JSF）」という子ども向けのサッカースクールのイベントロゴや告知のポスターなどのデザインを担当していた。そんな縁もあって、僕は上越高校サッカー部の活躍を密かに応援していたのだ。

今回のJSFのデザインを担当することになったのには不思議な縁があった。

以前にもこのコラムに書いたが、2014年からJリーグ川崎フロンターレのファミリーアートディレクターという一風変わった役職についている。2015年はシーズンユニフォームのデザインも担当したこともあって、その当時在籍していた選手との交流も深い。現在サガン鳥栖に在籍している森谷賢太郎選手もその一人だ。

その森谷選手が、上越にある僕がオーナー兼コーヒーロースターを務めるディグモグコーヒーに突然に現れたのは一昨年のシーズンオフだった。森谷選手のユース時代からの友人が上越高校の監督とのことで、仲間とサッカースクール（上越スポーツフェスティバル）を開催する為に上越までやって来た。そして開催2年目の昨年、「上越スポーツフェスティバル2023（JSF）」のロゴデザインを依頼してくれたのだった。

今回のロゴデザインは子ども向けのイベントということもあって、僕が実際にハサミで切り絵をしたようなものを構成して「JSF」の文字を作った。それぞれのパーツはなんとなく色々なスポーツのフィールドやエリア、ボールのような丸みなどをイメージし、切ったものを組み合わせ完成させた。あえてたどたどしい切り絵で、かっちりしてないところに子どもの遊び心や自由な発想を想像してもらえたらと創作した。

「JSF」の「S」がサッカーでなくスポーツとしているのは、今後様々なスポーツを合わせたイベントにする理想もあるかららしい。実際、上越高校はダンス部も全国大会に出場するほどの実力で、当日のイベント内ではそのダンス部のパフォーマンスも披露されいっそう盛り上がった。
主催したメンバーのJリーガー以外にも、上越出身の選手やアルビレックス新潟の選手の参加もあり当日は参加した子どもたちも、保護者たちもみんな笑顔で溢れていた。

そのイベント終了後、ささやかなトークイベントをディグモグコーヒーで開催した。ささやかと言っても、メンバーは豪華だ。せっかくの機会なので、僕はその司会をさせてもらったのだが、ふと横を見ると小さなコーヒーショップにこんなメンツが揃って並んでいるのが不思議で、ちょっと可笑しくなった。その日の細かな内容は、その会だけの秘密だが、それぞれの選手のピッチではわからなかった面もたくさん見せてもらい、聞いている僕が一番楽しんでいたかもしれない。

僕はたまたま出会ったサッカーで、日常の楽しみ（時には悲しみ）やたくさんの出会いをもらってきた。もし自分の中にサッカーが全くなかったらと思うと、そんな人生は想像できないほどに、今では欠かせないものになっている。ただ勝ったか負けたか、それ以外にも多くのことがサッカーの中には含まれており、もしかしたら無意識に自分の人生を考える時にも数々の場面で、それを参考にしてきたかもしれない。

Jリーグは新しいシーズンが始まったばかりだ。またその結果や内容にワクワクする時間が始まる。世の中の大きな出来事や他にもあるたくさんの楽しいことに比べたら、もしかしたら、たかがサッカーくらいのことなのかもしれない。だけどこんなに心が潤う幸せな時間を、僕はたくさん今年も楽しみたいと思う。たとえ、勝っても、負けても…だ。