SDGs de はぐくむコラム

子どもの“食べる力”を育てるアプローチ

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フリーランスとして歯科医院で働き始めてから、早くも半年が過ぎました。

【SDGs de はぐくむコラム・口から健康を支える管理栄養士を目指して】

この半年の間、先生やスタッフの皆さんから歯科分野について学ぶ中で、「食べる力は栄養だけでは育たない」という実感がますます強くなりました。食べることは、口腔機能という“土台”が育ってこそ成り立つものであり、その視点が管理栄養士としての仕事の幅を大きく広げてくれています。

現在は、診療室での業務と並行しながら、離乳食講座やお子さんの「食べ方サポート」を歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士が力を合わせて取り組んでいます。特に大切にしているのが『前歯でかじり取る』経験と『正しい姿勢』の2つです。どちらも一見小さなことに見えますが、子どもが“食べる力”を育てるうえで欠かせない要素です。

『前歯でかじり取る』ことは、単に食べ物を小さくするだけではありません。前歯でかじり取ることで唇を閉じる力が育ち、かじり取った食べ物は舌を上手く使いながら奥歯の方へ運び、モグモグとすりつぶす動作につながります。こうして、咀嚼の土台が作られていきます。

この経験が不足すると、唇や舌を上手く使うことができず、丸飲みが癖になったり、いつまでも噛めずに口に残ったりします。こうした“食べづらさ”は、噛みやすいものばかり好む「偏食」の原因になったり、食事が「疲れる作業」になることで食への興味そのものを失わせたりします。

結果として「あまり食べない」「体が大きくならない」といった成長のお悩みにつながることも多いため、早めに気づいて整えることが大切です。

そしてもう一つ重要なのが 「姿勢」 です。実は、噛む力は“口だけ”で完結するものではなく、体の安定と深く関係しています。
椅子に座った際に、足の裏がしっかり床につくかどうかは大きなポイントです。足がぶらぶらした状態では体が安定せず、上半身がぐらつき、口の動きも不安定になります。逆に、足がついて骨盤が立ち、体が安定すると、噛む力がぐっと発揮しやすくなります。

これまでの相談でも、足台を使って座り方を整えただけで、お口の動きがよくなりモグモグとしっかり噛んで食べられるようになったお子さんが多くいました。姿勢の調整はすぐにでき、家庭でも取り入れやすい大切な視点です。

講座や個別サポートを通して、「食べ方が変わってきた」「食事が楽しい時間になった」といった声をいただけるようになり、歯科と管理栄養士が連携する意義を実感しています。来年は歯科医院での講座数を増やし、個別の食事相談にも対応できる体制を整え、必要なタイミングで必要な方に支援を届けられるよう取り組んでいく予定です。

歯科に関わるようになり、“食べる”を支える仕事の可能性がさらに広がりました。
これからも、子どもの発達に関わる多職種の方々と連携しながら、子どもたちが全身を使って食べる力を育めるように、そして大人になっても「美味しいね」と笑い合える食卓を囲めるように、丁寧に取り組んでいきたいと思います。

    

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。12月13日は、管理栄養士のますがたみきさんです。お楽しみに!

http://立石勇生 SUNNY SIDE | BSNラジオ | 2025/12/13/土 10:00-11:00 https://radiko.jp/share/?sid=BSN&t=20251213100000

この記事のWRITER

ますがたみき(長岡市在住・管理栄養士)

ますがたみき(長岡市在住・管理栄養士)

1981年 長岡市生まれ 短期大学専攻科卒業後、長岡赤十字病院で管理栄養士として6年間勤務。子ども達の成長と母親の育児に寄り添うため自身が考案した「食能」をキーワードに「はれいろごはん」を設立し、おやつ開発や料理教室を展開。2児の母親。 長岡市委託事業として乳幼児の健診・栄養相談・特定保健指導なども担う。
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