2024年度のSDGs認知度調査(朝日新聞社)では、日本国内で88.7%の人がSDGsについて「聞いたことがある」と答えたそうです。学校教育において「SDGs」に触れる機会が多い10代が特に認知度が高かったという結果が出ています。また、約8割の人が「SDGsは持続可能な開発目標の略である」ということを知っていました。言葉としてはこの数年でだいぶ浸透してきましたが、「持続可能」に向けた一人一人の意識はどうでしょうか。持続可能な社会と聞いて、どんな社会像を描きますか。
教育コーディネーターの仕事を通じて、県内の小中高校等で、SDGsをテーマに扱った学習に関わらせてもらうことがあります。授業の冒頭では子どもたちに、SDGsのS―サステナブル(持続可能な)の意味を問うところから始めます。
「続いていくってことじゃないかな」
「SDGs達成に向けた行動を持続させていくってことじゃない?」
「この街がずっと続いていくってことかもよ」
子どもたちは、近くの席の人と話し合いながらさまざまな意見を出してくれます。どの意見も「持続可能」の核心をついていて感心させられます。その後、未来や社会について、さらに考えを深めていきます。未来を考えるときには、「こうなるといいな(続いてほしいと思うこと)」と「このままだと心配だな(課題だと思うこと)」という2つの視点から考えてみようと声をかけるようにしています。
「未来には、二酸化炭素や温室効果ガスが今より少なくなるといいな」
「このまま地球温暖化が進むのが不安だな」
「もっともっと地球が暑くなっちゃって、人間が暮らせなくなるかも」
これらは、どの学校(学年)でも必ず出てくる話題です。子どもたちにとっても、もはや地球温暖化や気候変動の問題は切実な問題であることを実感します。自分の身の周りで「温暖化」を感じることがあるか聞くと、いろんな声が返ってきます。熱中症アラートが出た日は休み時間はグラウンドに出て遊べなかったり、暑すぎてプール授業が中止になることがあったり、わたしの子どもの頃には予想もしていなかった変化が、いま子どもたちの身近で起こっています。
「技術の進歩」もまたよく挙がります。これについては、「こうなるといいな」と「このままだと心配」の両方の視点から意見が出ることが興味深いです。先日伺った中学校では、「人工知能の進化によって、どんどん人間は自分で考えなくなって退化するかも」という意見を話してくれた子がいました。生成AIの性能は向上し、さまざまな社会課題の解決に貢献しています。一方で、先ほどのような意見からは「進化は退化と表裏一体なのか」と深く考えさせられます。

小学校での出前講座
「そもそも、SDGsとは?」というところを少し補足すると、SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年に開かれた国連総会で採択された国際的な目標です。SDGsは国連の『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』という文書に記載されており、このタイトルの通り、SDGs達成には「変革」が鍵とされています。自己の変革を通じて、社会の変革を生み出すことが世界全体でめざされています。日本でも、SDGsを知ることにとどまらず、こうした世界の目標を捉えた活動を実践することが大切だと考えます。
「あと5年しかないじゃん」
先月伺った小学4年生のクラスでは、こんなつぶやきがありました。あと5年で何ができる?この10年間、社会はよりよい方向へ進んできた?5年後の地球はどうなっている?授業の中では、身近な「危機感」から、社会や世界に関心をもった子どもたちが、「自分ができること」を真剣に考えていました。
「うちね、野菜を育ててる。おすそ分けすることもあるし、近所からもらうこともあるよ。こういうのも大事なことですよね?」そんな話を聞かせてくれた子もいました。SDGsに関連づけると、「15陸の豊かさも守ろう」「13気候変動に具体的な対策を」「12つくる責任つかう責任」などいろいろな観点がみえてくるエピソードだと感じました。「地域の人が優しいところがすき。だから、わたしもみんなにやさしくする」そんな考えを話してくれた子もいました。「やさしさ」こそ、現代社会に必要な視点だとハッとしました。
このような子どもたちの姿こそが、変革への大事な一歩だと実感する傍ら、大人もがんばらなくてはと責任を感じます。わたしもやさしさを大切に、持続可能な社会をめざして行動し続けていきたいです。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
7月26日は、にいがたNGOネットワーク国際教育研究会 RING 企画副委員長の関 愛さんです。お楽しみに!