はぐくむコラム

こたえ合わせ!

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【前回コラム抜粋】

乳幼児の運動機能の発達は、「首のすわり」「ねがえり」「ひとりすわり」「はいはい」「つかまり立ち」「ひとり歩き」と進みます。ここで問題です。6つの運動機能の内、大人になるとできなくなることがあります。それは何でしょう?「できなくなる」は語弊がありました。正確には,「乳児のように正しくできなくなる」ということになります。もう一つ「大人になると」と書きましたが、3歳の入園児もできないお子さんが見受けられます。5歳児(年長)クラスになると1/3くらいしかできません。

【回答編】

それは「はいはい」です。正解できましたか?

この6つの動作「首のすわり」「ねがえり」「ひとりすわり」「はいはい」「つかまり立ち」「ひとり歩き」の内,「はいはい」はやらなくても良さそうですね。すぐ「つかまり立ち」をして「ひとり歩き」ができたら,すごそうですよね。

でも「はいはい」は奥が深いのです。「はいはい」は「腹這い(ずり這い)」「四つ這い」「高這い」に分けることができます。「はいはい」は「つかまり立ち」「ひとり歩き」の前に行われる全身運動です。この効果を3つの視点でみてみます。

  1. 筋肉を鍛えることができる。

大人は「はいはい」をすると下を見たまま進みます。乳児は前を見て進みます。この違いを経験してみましょう。「はいはい」の四つ這い姿勢をして,下を向いてから顔を上げて前を見てください。このときにどの筋肉を使っていますか? 首から肩の筋肉(僧帽筋)が主に収縮しているはずです。また,身体を両手足で支えるため,体重が負荷となります。この動作こそ,筋肉の発達を促します。発育過程の中で腕と首の力を自然に鍛えることができるのは「はいはい」だけです。

  1. 転んでも顔のケガをしない。

転んでも手が出ないで,顔面から着地をして怪我をする。まさかそんなことはあり得ない!と思われた方。現実的には多いのです。某市での研修会では,「顔を怪我しない方法を教えてください」と,リクエストがあったくらいです。①と関連がありますが,腕で身体を支え,顔を上げる経験をしないと,転んだときに手が出ないで顔面から着地をして怪我をしてしまいます。

  1. 歩く動作の練習になる。

歩く動作を考えてください。右脚が出るときは左腕が前に,左脚が出るときは右腕が前に出ます。これを交差パターンと言います。初期の「腹這い」は交差パターンが見られません。ほふく前進をする頃から交差パターンができるようになり,「四つ這い」で交差パターンができあがります。脚と腕の連動こそが,歩く動作や走る動作へ繋がっているのです。

 

「はいはい」を経験しなかったのなら,今からでも親子でやってみてください。3歳を過ぎた頃ならば,膝をつかずに足と手だけで行う「高這い」=「動物歩き」や,手を先に前に出し足を後から運ぶ「カエル跳び」「ウサギ跳び」は効果てきめんです。その時は必ず顔を上げて前を見てください。

「這えば立て立てば歩めの親心」:子の成長を待ちわびる親の気持ちですね。

「這えば立てて,立てば歩めて の親心」と急ぎませんように。

この記事のWRITER

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学人間生活学部子ども学科 教授)

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学人間生活学部子ども学科 教授)

1964年、三条市生まれ。日本体育大学大学院修了、新潟大学大学院博士課程修了。子どもの身体発育発達学、運動遊び、健康教育を専門に研究。県立自然科学館で「忍者アトラクション 出現!とやの城」を監修するなど、遊びの中で運動を身につける「遊育」を推奨。現在:県立大学人間生活学部子ども学科長。日本体育学会、日本発育発達学会などに所属。
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