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クセが強い! 〜なくて七癖あって四十八癖〜  

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地元・三条にあるSnow Peak FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS。ここは、私にとって欠かせない癒しの場所です。週に一度は必ず訪れ、心身をリセットする時間を楽しんでいます。
私のルーティンはシンプル。まず、6〜10分のサウナでしっかりと身体を温め、その後2分間の水風呂で一気にクールダウン。そして、内気浴または外気浴を30分ほど行います。このサイクルを3セット繰り返すことで、心地よいリラックス感が得られるのです。

特に、これからの季節は紅葉が始まり、山々が美しい色に染まります。その景色を眺めながら、深呼吸をするひとときは、言葉にできないほどの贅沢な時間です。冬には雪が降る中での外気浴もまた、格別の心地よさです。

サウナで感じる「ととのう」感覚は、「ランナーズハイ」に似ていると言われます。脳内で分泌される「β-エンドルフィン」「オキシトシン」「セロトニン」といった物質が、幸福感やストレス緩和、精神安定をもたらしてくれるのです。私も、この「ととのう」瞬間に新しいアイデアやひらめきを得ることがよくあります。頭の中にあった複数の課題が、まるで整理されるかのように、一気に「ボン」と答えが浮かび上がるのです。

今回のコラムも、そんなサウナでのリラックスタイムから生まれました。ふと気づいたのは、私がリラックスするときに右脚を左脚の上に組む癖があること。しかも、脚を組み替える時に、右足、左足、そして再び右足と、3ステップを踏んでから左脚を右脚の上に持ってくるのです。この「変な癖」に気づいたのは、サウナの熱気に耐えている最中のことでした。
その瞬間、千鳥のネタ「クセが強い」が頭をぐるぐる回り、「そうだ、癖を題材にしよう!」とひらめいたわけです。

序章が長くなりましたが、ここから「癖」について考えてみたいと思います。

ネットで「癖」という言葉を調べてみると、面白いことに気づきました。例えば、goo辞書で「癖」を検索すると、癖で始まる言葉には「クセある馬に能あり」「癖毛」「癖字」「癖球」「癖地」「癖者(曲者)」「癖人(曲人)」など16語がありました。また、癖で終わる言葉には「悪癖」「足癖」「遊び癖」「口癖」「酒癖」「嗜癖」「習癖」「抱き癖」「手癖」「怠け癖」など、なんと53語も出てきました。

こうして見ると、「癖」がつく言葉には、あまりプラスの意味を持つものが多くないことに気づきます。やはり「なくて七癖あって四十八癖」とあるように、人は多かれ少なかれ、癖を持っているものの、その多くがネガティブな印象を与えることが多いのかもしれません。

では、癖の悪い面について考えてみましょう。

まず、健康への影響です。暴飲暴食の癖やたばこを吸う癖は、身体に大きな負担をかけ、さまざまな病気のリスクを高めてしまう可能性があります。また、ストレスを軽減するために行っている癖が、かえって健康に悪影響を与えることもあるので、注意が必要です。

次に、成長の妨げです。遅刻癖や怠け癖は、学業や仕事において信頼を損ない、成果を上げることが難しくなります。自分でもその癖を分かっていても、改善の努力を怠ったり、行動を起こさなかったりすると、結果的に自己成長を妨げることになります。

最後に、社会的な評価についてです。頻繁に貧乏揺すりをする癖や、話し方に癖がある、または舌打ちをするなどの行動は、周囲の人に不快感を与えます。その結果、社会的な評価が低くなり、人との付き合いに悪影響を与えることがあるのです。

いやいや、癖には悪い面だけではありません。プラスの側面もあるはずです。そこで、癖のポジティブな面について考えてみました。

まず、個性の表出です。癖は、個性や人柄を表現・表出する大切な要素といえるでしょう。例えば、話す時に笑顔を浮かべることや、挨拶をする時にお辞儀を深くすることなどは、その人の礼儀正しさや温かさを感じさせます。これらの癖が、その人を特徴づけ、他の人から覚えられやすくする効果もあります。

次に、習慣形成です。毎朝のラジオ体操や散歩、新聞を読むといったルーティンは、時間を守る習慣を形成し、日常生活にリズムを与えます。これにより、自己管理能力が高まり、健康的なライフスタイルの維持に役立ちます。特定の動作を繰り返すことで、長期的な成功や幸福感をもたらし、精神的な安定を得ることができる人もいるでしょう。

最後に、ストレスの軽減です。髪をいじったり、顔を触ったりする癖は、緊張や不安を和らげるための自己防衛反応といえるでしょう。これによって、心の安定や落ち着きを保つことができる場合もあります。

このように、癖にはポジティブとネガティブの二面性があります。

重要なのは、癖を意識し、それを上手にコントロールすることです。そのためには、いくつかのステップが有効です。

まず、自分の癖を客観的に見つめることが大切です。具体的には、次のようなアプローチが考えられます。
❶無意識の行動に気づく ❷行動の原因を探る ❸他者の視点で考える ❹記録をつける

次に、悪い癖を改善するための具体的な行動計画を立てることです。以下の手順で進めると効果的です。
❶目標を明確に設定する ❷癖のトリガーを特定する ❸小さなステップで始める ❹成功を祝う

最後に、良い癖を維持し、新たな良い習慣を身につける努力を続けることも大切です。これには以下の方法が役立ちます。
❶具体的なメリットを考える ❷トリガーを設定する ❸達成感を得る ❹進捗を記録する

ほんの少し意識を向けるだけで、癖は人生を豊かにするための大切な鍵になるかもしれません。

「なくて七癖あって四十八癖」と言われるように、癖は人間らしさの一部です。自分自身を発見する過程も、きっと楽しいものでしょう。

そんなことを考えながら、今日もサウナで「ととのい」、脚のステップを楽しみたいと思います。

 

  

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。10月5日は、新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授の伊藤巨志さんです。お楽しみに!

http://立石勇生 SUNNY SIDE | BSNラジオ | 2024/10/05/土 10:00-11:00 https://radiko.jp/share/?sid=BSN&t=20241005100000

この記事のWRITER

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授)

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授)

1964年、三条市生まれ。日本体育大学大学院修了【体育学修士】、新潟大学大学院博士後期課程修了【博士(教育学)】。子どもの身体発育発達学、運動遊び、健康教育を専門に研究。新潟市寺山公園子育て交流施設「い〜てらす」低学年広場を監修するなど、遊びの中で運動を身につける「遊育」を推奨。現在:人間生活学部子ども学科長。日本体育・スポーツ・健康学会、日本発育発達学会などに所属。
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