SDGs de はぐくむコラム

苗育てと子育て~実体験でみえてくるもの~

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家庭菜園を始めて4年目になりました。毎年5月に、農家さんが販売する苗を購入し、無農薬・有機肥料で育て(聞こえはいいですが、ほったらかし農法かもしれません・・・)いつも美味しい野菜を収穫することができました。

ある時、子ども達が「この苗ってどうやってできたの?」と呟いたことをきっかけに、苗になるまでの過程を知りたい、農家さんのお仕事をもっと理解したい、という思いが強くなりました。いつも苗を購入している長岡市『鈴木農園』さんで農繁期の2~4月のみお手伝いをさせてもらうことになりました。

お手伝いと言っても、仕事の合間の僅かな時間…。農家さんの力になるというより、その時の苗の状況を学ばせてもらいました。農家さんや農業を語るにはあまりにも素人ですが、素人なりに感じたことを発信していきたいと思います。

まずは農園の様子をご紹介します!

鈴木農園さんでは、雪が多い1月からビニールハウス内の草取りなど準備を始めます。本格的に野菜の苗作りを開始するのは2月中旬~下旬頃。地域のベテランさんや農繁期前の農家さん、春休み中の大学生達がお手伝いにやってきます。

野菜の種を蒔く前に、まずはふかふかの土のベッドを用意し、均等に種が蒔けるように気を使う作業が続きます。発芽後は、販売まで何回か苗の大きさに合った個室(土を入れたポット)に移していきます。

途中で【接ぎ木】もします。病気や暑さなどに強い別の種類の苗を土台とし、その上に育ててきた苗の先端を切ってつなぐ作業(まるで手術!)を手で慎重に行います.

相手は命ある生き物…。雑に扱うと枯れてしまうし育ちも悪くなるため、人間の赤ちゃんと同じように、一つ一つ手をかけながら優しく大事に育てていきます。

苗の背がぐーんと伸びたら、支柱を立てる作業が始まります。この時期になると、ハウスの中は真夏のような暑さになり、なかなかの重労働です。そうして、手塩にかけて育った苗は出荷の日を迎えます。まるで親心のように「元気に良い実をつけるんだよ!」と応援しながら送り出す心境となり、まさに苗育ては【子育て】でした。

今回、ほんの少しの期間でしたが農園でお手伝いをさせていただき、今まで以上に私たち口に入る全ての「いのち」に対しての愛しさと、農家さんへの感謝の気持ちが強くなりました。

近年、「時短・簡単」という言葉が注目される中、農園でのお手伝いを通じて、命を扱うことは手がかかり、良いものを作ることは時間がかかることを学びました。

それは子育ても同じで、どんなに完璧な育児書ができても、目の前の子どもは必ず手をかけなくてはならないし、時間をかけて愛情を注いだぶんだけ子どもの力になっていくのだと思います。

そして、子ども達にも完成したものだけを知るのではなく、命の始まりから、育つ過程を楽しむ経験をたくさんしてほしいと思います。簡単に「あれがほしい!」「これはいらない!」が減るキッカケになるのではないでしょうか。

食品ロスを減らす、農業の大切さ、環境問題など、農業✕SDGsの取り組みは注目されている一つですが、「実体験」から生まれる想いはより強いと思います。

小さなプランターで種からお花や野菜を育ててみるのはもちろん、もし近所に畑があったら、お散歩中に少し足を止めて、前回見た苗と比べてどう成長したかお子さんと話すのも素敵ですね!
「こうして大きくなったんだね」「ありがたいね」の言葉が隣にいるお父さんやお母さんから聞けたら、子どもにとって何よりの食育授業です。
(ちなみに、私の子ども時代は青虫を育てて蝶にする、ヤゴを育ててトンボにするなど、虫が変化していく過程を見るのが大好きでした。興味があればぜひ!)

今回は農家さんのお話をしましたが、ぜひ生産者さんに会える機会があればどんどん足を運んでみてください。きっと大切にしたいもの、愛しいものがまた一つ増えると思いますよ!

  

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」お伝えしています。
4月23日は、ますがたみきさん のお話をお楽しみください。

この記事のWRITER

ますがたみき(長岡市在住・管理栄養士)

ますがたみき(長岡市在住・管理栄養士)

1981年 長岡市生まれ 短期大学専攻科卒業後、長岡赤十字病院で管理栄養士として6年間勤務。子ども達の成長と母親の育児に寄り添うため自身が考案した「食能」をキーワードに「はれいろごはん」を設立し、おやつ開発や料理教室を展開。2児の母親。 長岡市委託事業として乳幼児の健診・栄養相談・特定保健指導なども担う。
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