20代からイラストレーターとして仕事を始めた僕は、これまでに書籍や広告、商品などで、たくさんの絵を描いてきた。だけど、特に最近、僕の仕事として一番知られているのは、おそらくNHK Eテレの「みいつけた!」だろう。番組のアートディレクターという立場で番組のセットデザインや衣装、番組のロゴデザインなどを行っているが、その中でも「コッシー」や「サボさん」など、番組に登場するキャラクターたちのデザインを担当した人としての認識をとても強く感じる。テレビのキャラクターが話したり、笑ったり、時には泣いたり、その様子を見て共感することが多ければ多いほど、身近に感じ、記憶にしっかりと残っていく。だから、毎日のように放送されている「みいつけた!」のキャラクターは、その印象も深い。中には、まるで自分の友だちのように思ってくれている人も多く、とても嬉しい。
もう昨年のことになるが、BSNの方から、局の新しいキャラクターの依頼を受けた。
幼い頃から、BSNテレビやラジオに親しんできた僕にとっては夢のような仕事だ。
新しく生まれるキャラクターをたくさんの方に長く愛してもらうために、僕はいろいろなキャラクターのアイデアを考えた。
例えば新潟の美味しいものをキャラクターにする案とか、今までに誰も見たことがないような不思議なキャラはどうかなど。しかし、食べ物から発想すると、テレビ局のキャラクターというよりはその食べ物のキャラクターに見えてしまいそうだし、見たこともない不思議なものになればなるほど、みんなに愛されるキャラからはなんだか遠くなった。キャラクターを作り出す切り口がなかなか簡単には決まらない。
何かの動物をイメージして作るということも、もちろん考えた。いくつかの動物をモチーフに考えた後に、ふと、浮かんだのが、実はパンダだった。
おそらくパンダを見て嫌なイメージを持つ人はいないだろう。まず、愛されるキャラクターの条件はクリアできそうだ。パンダの体は白と黒だけど、白黒をはっきりさせる存在よりは、むしろその逆ではどうかと考えた。小さなことでも、どちらがいいか悩み、迷い、うまくイエスかノーを言えない様子は、健気で可愛く思えるのではと思った。白黒はっきりさせないということが、自分の周りの新潟県民にも共通しているように思えた。県民性ではないと思うが、もしかしたらそれは、相手のことを考える優しい気持ちからなのだと考えると、心の優しいキャラクターのイメージが重なった。
なので、色は白黒ではなく、白とグレーにしようと決めた。それは、何となく新潟の天気のイメージにも似ている。晴れたと思ったら曇り出したり、少し雨が降り出したと思ったら、今度は急に晴れたり、曇りも多い新潟の天気はグレーのイメージが合う。僕はそのグレーな空が嫌いではない。なぜなら変化が多い空は、表情が豊かで、夏の暑さや、冬の雪や雨が多いことも、大地を豊かにし、自然環境として時には過酷だが、とても恵まれているとも言えるからだ。
そんな独特な天気一つとってもネガティブに考えず、ポジティブに感じられるキャラクターになったら、それは素敵なことだと思った。このキャラクターの片方の耳は太陽、もう片方は雲にした。どちらも半分隠れている。いわばどっちもありの状況はグレーとも合う。
男の子がいいのではという意見が出たので、だったらあえてピンクはどうだろうと、色を追加した。こうして、だんだんキャラクターのイメージは固まり、今回のキャラクターのデザインができていった。
キャラクターデザインができて、表面上は一応、完成なのだが、実はここからが1番大事なところだと思っている。
デザインすればキャラクターは生まれるが、できることなら、ここからBSNや視聴者のみんなと一緒に、このキャラクターを育てていきたいからだ。テレビやラジオから伝わるこのキャラクターの様子を視聴者のみんなに共感してもらい、まるで自分の身近な出来事のように感じてもらえたら理想的だ。そんなことをたくさん発信していけたらと思っている。
実はこのキャラクターの名前募集が始まっている。みんなにどんな名前がいいのか考えてもらい、何年かたった時に、「実はあの時、こんな名前を考えていたんだよね」と話せることも、もしかしたら楽しみの一つになるのかもしれない。
名前は生まれた時に最初にもらうプレゼントだ。だから、みんなから、たくさんのプレゼントが届くといいなぁと思っている。
たくさんの愛情をもらって生まれ育ったキャラクターが、やがてまた誰かの愛情を伝えたり、届けたりできるようになれたらと願っている。ささやかなことでもいいので、局の、いや県内の、そんな愛情の象徴になってくれたら親としては最高に嬉しい。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
7月23日は、スタジオに大塚いちおさんが登場します。お楽しみに!