夏を楽しんでいますか。この時期、夏祭りやお盆など、何かとお客様を迎えることがありますよね。皆さんの家庭では、どんな「おもてなし」で迎えますか?どんな料理でおもてなししますか?今回は、海外のホームステイ先でいただいた料理から考えた「おもてなし」がテーマです。
3年前に、ラオス人民民主共和国(以下、ラオス)を訪問し、ホームステイをさせてもらいました。メコン川とともに生きる国ラオスの第一印象は「ああ、なんだか懐かしい心地だなあ…」という温かなものでした。ラオスの人々や生活の中にある素朴さに魅了され、大切な国の一つとなりました。
ホームステイ先に到着した日の夕飯に、お皿に山盛りの鶏の唐揚げが出ました。ぶつ切りの唐揚げをよく見ると、爪の先や足の形がそのままに揚がっています。頭もしっかりとありました。どうやら、1匹丸ごとさばいて調理してくれたようです。野菜が入ったスープの出汁にも鶏が使われていました。おかずには、目玉焼きも並んでいました。まさに、鶏のすべてを食べ尽くす料理です。「どんどん食べて」「おかわりどうぞ」と食事を勧めてもらい、唐揚げに伸ばす手は止まりませんでした。お皿からこちらを見ている目が怖くて、頭を食べることができなかったことが悔やまれましたが…。私が滞在した家は、ニワトリを調理してくれましたが、中にはアヒルを調理する家庭もあるようです。自分たちが飼っている鶏を屠殺し、ふるまってくれたことは、日本から来た私たちへの最高の歓待だったのだろうと思います。
この食卓には三つの「おもてなし」が詰まっていたように感じます。一つ目は、大事な家畜を1匹提供して来客を歓迎してくれたことです。二つ目は、頭から足先まで、余すことなくいただく、鶏の命に対することです(感謝とも言えるでしょう)。三つ目は、地球環境に対してです。そこには、自然と調和しながら暮らす村の人々の心があらわれていました。
肉も魚も寿司もパスタも、なんでもあふれている食卓は確かに贅沢ですが、家庭や地域で生産されたものを無駄なくいただくこと、ゴミやエネルギーなど地球環境に配慮したふるまい、家族や友人みんなで食卓を囲む豊かな時間、こうしたことにはお金には換えられない価値があります。ラオスの村での生活体験から、「本当のおもてなしとは何か」ということを考えさせられ、それは、持続可能な未来を考えるうえでの大事な視点にもなりました。
さて、「余すことなく命をいただく」という文化に着目すると、日本各地でもその文化を見ることができます。新潟県の例で言えば、村上市の鮭もその1つです。鮭は普段の食卓にもお祝いの席にも欠かせない魚です。「3つのおもてなし」の文化は身近なところにもありました。
様々な地球規模の課題が懸念されている今こそ、地域の食文化、自分たちの日々の食を見直すことは、人だけでなく地球への思いやりにも繋がるかもしれませんね。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
8月20日は、関 愛さんです。お楽しみに!