日本は自然災害のリスクが高く、地震や台風などに見舞われる危険性は、他国と比べても非常に高いとされています。ドイツの大学が発表した「世界リスク報告書2023*」によると、日本は地震、津波、サイクロン、暴風雨、洪水などの自然現象に曝される人々の割合が世界で3番目に高いとされています。
日本の自然災害リスクの高さは、国連防災世界会議が開催された都市の選定にも反映されています。第1回は横浜市(1994年)で開催されましたが、第2回は阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けた神戸市(2005年)、第3回は東日本大震災で甚大な被害を受けた仙台市(2015年)で開催されました。第3回国連防災世界会議の成果文書として採択された「仙台防災枠組2015-2030」では、災害対策における4つの優先行動:災害リスクの理解、災害リスクガバナンスの強化、災害リスク軽減への投資、より良い復興(Build Back Better)が合意され、これらが世界が優先的に取り組むべきグローバル目標として位置づけられました。「より良い復興」とは、災害が発生する前よりも準備を整え、災害の復旧・再建・復興の過程で、災害リスク削減を施策に取り入れることを意味します。そのためには、強靭(レジリエント**)なインフラ(インフラストラクチャー/社会資本)をつくることが重要となります。
*The WorldRiskReport 2023 https://weltrisikobericht.de/en/
**強靭(レジリエント):回復力のある、復元力のある、素早く立ち直れる
2021年に世界フォーラムが発表した「旅行・観光開発指数レポート2021(観光魅力度ランキング)」では、日本が初めて世界1位となりました(残念ながら、2024年は3位)。これは交通インフラの利便性が高く評価された結果であり、実際に日本の交通インフラは非常に発展しています。しかし、水道インフラや橋梁の老朽化など、深刻な問題も抱えています。1960年代の高度経済成長期に整備された多くのインフラが、2040年には全体の75%が建設から50年を超えるとされています。つまり、インフラは耐用年数を超え、補修や建て替えが必要な時期に入ってきており、これに充てる財源や技術者の不足への対策が求められています。国土交通省は「インフラ長寿命化計画」を立ち上げ、インフラの持続可能性を保ちつつ、コスト削減と効率化を推進しています。計画では、損傷の早期発見と修繕により、大規模な修繕よりもコスト削減を目指しています。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用し、メンテナンスプロセスの効率化を図っています。
インフラは、水道や交通だけではありません。通信、電力、鉄道、公共施設などの物理的な社会資本だけでなく、学校、病院、公園、社会福祉施設などの生活関連の社会資本も含まれます。例えば、レジリエントな放送・通信インフラの構築は、国民生活や産業経済活動が安心・安全の実現に不可欠です。特にラジオ放送は、自然災害時などにおいてライフライン(情報伝達手段)として最も安定し、詳細な情報を簡便に受け取れるインフラの一つです。防災グッズにラジオが含まれている理由も納得できます。それでは、ラジオが災害に強い理由とは何でしょうか???
経済成長や持続可能な地域社会の基盤を構築するために欠かせないインフラ。このテーマについて話すと長くなってしまうので、今回はこの辺でお仕舞いにしたいと思います。次回は、放送・通信インフラの「ラジオ」についてお話ししようと思います。お楽しみに!
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。7月6日は、長岡技術科学大学 SDGs推進室員 勝身 麻美さんです。お楽しみに。