はぐくむコラム

東京と新潟  最近想うこと

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東京・渋谷に仕事場があるので、今も僕はそこで仕事をしている。北陸新幹線が開通し、上越妙高駅お出迎えキャラクターの”ウェルモ”が生まれてからは(生まれたと言っても、ウェルモはお酒も好きな20歳なのだが…)定期的に東京と故郷・上越を往復する生活になった。時には仕事の道具を持参し、数日間、上越で仕事をしたりもしていた。夜は地元の居酒屋で郷土料理やお酒を楽しみ、少しお酒を飲み過ぎたとしても、翌朝には、遠くの山・近くの川を眺めたり散歩したりする生活は、東京にいる時より、健康的だったかもしれない。さらに去年、上越市に「DIGMOG COFFEE」という自家焙煎のコーヒースタンドをオープンしてからは、月に2度、3度と行くのがあたりまえになっていたので、緊急事態宣言が発表されてから1ヶ月半以上、一度も新潟に帰っていない。こんなことは数年ぶりの事だ。高田公園の観桜会の中止が決まり、それでも毎年出している”ウェルモ”のぼんぼりを確認しに行ったのが、最後になってしまった。

新潟に比べ感染者数が多い東京は、大人も子どももマスク姿で、いつもにくらべると出歩く人の数は圧倒的に少ない。特に夜は、お店もあまりやっていないこともあり、それほど遅くない時間でも、深夜のような人の少なさにびっくりする。

東京での仕事と言えば、特任教授として授業を持っている東京での大学の授業は4月から一旦止まり、ようやく最近、オンラインの授業ではあるが、5月中旬から再開した。毎年、秋に長岡造形大学の授業にも行っているが、その頃には長岡で授業できるようになっていてくれたらと思っている。

緊急事態宣言がでた4月初めは、撮影を伴う仕事のほとんどが止まってしまったので、たまには本を読んだり、オンデマンドの映画でも観たり、ちょっとのんびりするのも悪くないかと思っていた。実際、そんな日も数日あったのだが、zoomなどリモートで打ち合わせや会議ができることがわかってからは、ビデオ会議に加え、ひとりで机に向かってイラストを描き、徐々にいつものように仕事に追われ始めた。ただ、いつもと違うのは、仕事の合間の息抜きで足を運んだカフェや、その帰りに立ち寄っていた書店、仕事後にご飯を食べに行っていた飲食店のほんどが休業となっていること…。そんな状況を見ていると、いま僕が、普通に仕事ができていることに幸せに感じた。

実は、世の中が今のような状況になるとは想像もできなかった去年から今年の初めまで、一冊の絵本の制作をしていた。木坂涼さんが文を担当し、僕が絵をつけた「おとなりさん」である。

絵本の制作では、たくさんの絵を描かなくてはならないので、その作業が大変だった。そのころは、「この絵本ができたらイベントなどしたい」と楽しみにしながら頑張ったが、3月の発売直後のコロナ禍で、イベントなどは、結局何もできなくなってしまった。

でも、完成したこの絵本は、みんなが不安になっているこの時期に、家で子どもに読み聞かせするには、実にぴったりな絵本になった。シンプルな構成だけど、何度でも楽しんで読めるし、子どもと一緒にコミュニケーションをとりながら読むのに、とても良い。親子でそのように過ごすことで、当たり前のこの時間の幸せにも気づけるかもしれない。

たまたまこの絵本のスタートは、コロナに隠れ、地味なスタートになってしまったが、読んでいるその時間だけでも不安な気持ちから離れ、お互いをより強く近づけるものになってもらえたら、それはとても嬉しいことだ。

早く安心して、家族で美味しいプリンアラモードを食べに出かけられる世の中になってくれればと思う。なぜプリンアラモードなのかは、読んでからのお楽しみだ。

 

この記事のWRITER

大塚いちお  (東京都在住 イラストレーター・アートディレクター )

大塚いちお  (東京都在住 イラストレーター・アートディレクター )

1968年上越市生まれ。イラストレーター・アートディレクターとして、テレビ、CMなどのイラスト・デザインを手掛ける。子ども番組「みいつけた!」(NHKEテレ)アートディレクションを担当。連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK)タイトルバックイラストなど。子ども向けのワークショップも多数開催。2005年に東京ADC賞受賞。東京造形大学特任教授。
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