SDGs de はぐくむコラム

SDGsは“お金”なしでは進まない!?

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皆さん、日本は「借金だらけの国」だと思いますか?それとも「お金に余裕のある国」だと思いますか?

2024年の日本の政府の「総債務残高」は、名目GDP(国内総生産)に対して約237%と世界でも2番目に高く、金額にして約1130兆円にもなります。国民全員が1年間で稼ぐ所得(約500~550兆円)をそのまま返済に充てたとしても、少なくとも2年以上かかる計算です。

一方で、2024年の「名目GDP」はドイツに抜かれましたが、世界第4位(約600兆円規模)です。また、日本が海外に持つ資産から負債を差し引いた「対外純資産」は約530兆円で、2024年までの33年間は世界1位を維持してきました(2025年にはドイツに抜かれて2位となりましたが・・・)。こうした数字を聞くと、「日本はお金があるのか、ないのか、よく分からない国だな…」と感じるかもしれません。

GDP(国内総生産):付加価値の合計額、国の「経済力」を総合的に示す
債務残高対GDP比:政府が抱える借金の大きさを国内の経済力に対して比べたもの。国の「財政健全性」の目安
対外純資産:日本の政府・企業・個人が海外に持つ資産から、海外の政府や投資家が日本に持つ資産を差し引いたもの。国の「海外に対する資金的な余力」を示す

普通国債残高とGDP
出典:財務省

 

では、SDGsとお金の関係はどうでしょうか?

SDGsを達成するには、莫大な資金が必要です。例えば、国連総会で採択されたSDGsを支える国連の財源は、加盟国が義務的に支払う「分担金」と、各国が政策的に拠出する「任意拠出金」です。日本はアメリカ、中国に次ぐ第3位の拠出国であり、日本の税金は平和維持活動、人道支援、気候変動対策など、世界の課題解決に使われています。

国連本部(ニューヨーク)

特にSDGsのゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」には、資金に関するターゲットが数多く盛り込まれています。例としてあげると、

・開発途上国の税収や徴税能力を強化する支援(17.1)
・先進国が国民総所得(GNI)の0.7%をODAに充てるという国際的な約束(17.2)
・途上国の債務負担を軽減し、持続可能な成長を支援する仕組み(17.4)

などがあり、「お金」そのものがSDGs達成の鍵になっていることが分かります。

開発途上国では、道路・上下水道・発電所など、生活や産業の基盤となるインフラ整備が遅れている現実があります。しかしインフラ整備には莫大なコストがかかり、資金が不足しています。インフラが整わなければ経済は発展せず、貧困削減も進みません。だからこそ、先進国や国際機関、民間企業など、さまざまな主体が途上国に資金を供給することが欠かせません。資金が流れ込むことで、再生可能エネルギーの導入や環境対策など、これまで資金不足で進められなかったプロジェクトが実現できるのです。

SDGsは「理念」だけでなく「資金」と深く結びついています。お金がなければ持続可能な社会はつくれません。しかし逆にいえば、私たちが納めた税金や企業の投資が、世界の未来を少しずつ形づくっているともいえるのです。

「日本は借金大国?それとも資産大国?」

答えは簡単には出せませんが、確かなのは「お金の流れをどうデザインするか」が持続可能な社会の実現を左右するということです。私たちの身近なお金の動きが、SDGsの一部を形づくっている、と言ってもいいのかもしれません。

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。8月16日は、長岡市在住で長岡技大国際産学連携機構 特任講師/主任UEA  の 勝身 麻美さんです。お楽しみに。

http://立石勇生 SUNNY SIDE | BSNラジオ | 2025/08/23/土 10:00-11:00 https://radiko.jp/share/?sid=BSN&t=20250823100000

この記事のWRITER

勝身 麻美(長岡市在住 長岡技大国際産学連携機構 特任講師/主任UEA)

勝身 麻美(長岡市在住 長岡技大国際産学連携機構 特任講師/主任UEA)

1973年 東京都生まれ、高知県育ち。理学博士。初・中・高等教育に従事、一般企業勤務(海外)を経て、 現在は長岡技大国際産学連携機構所属の特任講師/主任UEAとして 、学長からSDGs企画・立案・推進スペシャリストとして特命を受ける。令和3年度科学技術分野 文部科学大臣表彰科学技術賞。
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