新年度・新学期が始まり、2ヶ月経ちます。みなさんはどんなスタートを切りましたか。
登校班で小学校へ通学する息子の班には、この春から1年生と転校生合わせて3人が加わり、にぎやかになりました。私が住む地域は子どもが少ない所なので、登校班がにぎやかになっただけで嬉しく思います。
「今日、いろんな国の通学の様子が描いてある本*を読んだ。机を運んで学校に通っている子とかいたよ。」
ある日、学級図書として先生が置いてくれた1冊の本を手にとった息子がそう教えてくれました。「どうして机を運びながら学校へ行くのだろう。」と聞くと、「学校に机がないから?」と少し考えて答えました。
机や教材、先生など、学校教育に必要な環境が整っていることは世界の当たり前ではないことを読書を通して少し知ったようです。
では、実際に海外の学校はどのようでしょうか。アフリカ大陸の西南にある国、カメルーン共和国に今年の1月からJICA海外協力隊*として派遣されている友人に、「カメルーンの学校の様子」を聞いてみると、日本との違いや日本と似ているところなど興味深い話をたくさん聞くことができました。
―カメルーンの幼稚園、小学校に赴任して驚いたことは?
「まず、1クラスに120人の児童がいるクラスもあること。そして、子どもたちが個人のミニ黒板とノートの2つを併用していること。普段、問題を解いたりするのは、ミニ黒板(お店で150cfaF=約30円で売っている)で、学習のまとめ・書き取り・テストなどは、ノート(300cfaF=約60円)に。さらに、難しい問題ができたり、頑張りが認められたりしたときの、ご褒美は白チョーク(それも3分の1くらいに折ったもの)!」
―120人! 先生は全員を見るのが大変そう!
「でも先生たちは、授業中に自分の携帯電話が鳴ったら電話をしに外に出たり、教室の外にアボカド屋さんや洋服売りの人などが来たら、教室をそのままにして外に見に行ったりもする。そこから戻ってきたら、騒いでいる子どもたちを怒る。」
―先生なのに、マイペース!それって、日本と文化の違いもあるのかなあ。
「加えて、賃金が安いにもかかわらず拘束時間が長い、といったように先生の負担が大きいことも仕事への意識に影響しているかもしれない。でも、先生が子どもたちのことを考えて、授業をしている学級は、子どもたちもよく話を聞き、落ち着いている。その逆もまた。これはカメルーンだけに言えることではないのかもしれないけれど。」
「子どもたちは、黒板の前に出て、読んだり書いたりすることがみんな大好きで、いつもやりたがる。あと、授業中に1人がトイレに行ったら、他の子も次々トイレに行きたがる(笑)」
―そういう”子どもらしさ”はどこの国の小学生もおんなじだね。
「基本的に、教室には、机と椅子、黒板と、先生の机と椅子しかない。掲示物、教材はないし、紙1枚でさえも、簡単に準備ができない。だから、先生たちは、必要な絵を黒板にとても上手に描く。教材がない中で、絵を描いたり、家から実物を持ってきて見せる先生もいたり。そうした先生たちの努力はすごいと思った。」
SDGsの目標4は「質の高い教育をみんなに」という目標です。私は、この目標で核となる部分は2つあると思っています。ひとつは「みんなに」であり、生まれた国の違いや性別や障がいの有無などによって格差があってはいけないという意味が含まれた大事な言葉です。もうひとつは「質」です。教育の「質」とは、答え(知識)を与えることに留まらず、「なぜだろう?」と子ども自身が探究する力を育てていくところにあると私は思います。そして、子どもたちの探究する力を育てるために、時には、先生と児童・生徒が共に学んだり、子ども同士で学びあったりすることも価値ある経験です。また学校の中だけではなく、地域や学校外の人材も子どもたちの視野を広げる役割をもっていることでしょう。つまり、「質」の高い教育を目指すうえで重要なのは、何があるか(設備、道具)以上に、どんな力を育むかというところです。そして、そうした教育を受ける機会はすべての人に等しくあるべきだとSDG4は示しています。
さて、国が違えば学校の環境も違うと知った息子は自分の環境をどのように捉えているでしょうか。「日本は恵まれていてよかった」で終わらせることなく、貪欲に学ぶことを楽しんでほしいですし、それが社会を変える一歩になると願いながら、今日も私は地域の子どもたちの登校班を見守っています。
*「すごいね!みんなの通学路」 大人の本棚こどもの本棚 でも紹介されました。
*JICA海外協力隊 については こちらから
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
5月28日は、関 愛さん のお話をお楽しみください。