はぐくむコラム

小学校オリジナルカレンダー

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ちょっとした会議の合間や、居酒屋の雑談トークなど、大人になってもよく話題にあがるのが、修学旅行の話だ。上越市にあった僕の中学校は、特急電車で上野まで行き、上野動物園に寄ってから、京都、奈良を巡った。それぞれ育った地域が違えば、「いやいや僕は東北だ」「私は九州だった」「そういえば新潟でスキーだったよ」など様々だ。そんな会話がはずみ、そこから繰り出されるエピソードは話していても聞いていても楽しいものだ。

ちなみに小学校の修学旅行は、”佐渡からの新潟市”という大方の予想を裏切り、その年に限って新潟市のみだった。当時は佐渡に行けないことが残念だった。僕らは県庁を見学し、西堀ローサで買い物などをした。大人になって新潟市によく行くようになり振り返ると、それもいい思い出となっている。

小学校の思い出は、もちろん修学旅行だけではない。運動会や文化祭など、僕は準備の段階から気持ちが盛り上がり、ワクワクしながら当日を迎えた。やってみないとわからないことが多く、経験によってぐんぐん成長していく小学生には、どれも良い経験だったと思う。

もし、それほどまでのワクワクを抱えていたイベントが、全て目の前からなくなってしまったら、想像できないほど大きくポッカリと、心に穴が空いてしまっていたに違いない。

 

この1年、そんなことが全国各地で起こっていたのだろう。

 

新潟市の鈴木恵さんから、まさにそんな話を聞いたのは去年12月だった。鈴木さんは、僕が上越市に作ったコーヒー焙煎所「DIGMOG COFFEE」にもよく来てくれて、会うといろいろな話をする仲だ。鈴木さんのお子さんが通う新潟市立五十嵐小学校も、感染拡大の影響でイベントのほとんどが中止になってしまっていると言う。子どもたちに喜んでもらえるようなイベントができる気配もない。PTAでは、その代わりに何か子どもたちに、少しでも喜んでもらえるプレゼントを贈りたいと考えていたとのこと。そこで、ちょうど新年から使えるカレンダーを作りたいのだが、そのイラストとデザインをお願いできないかと相談された。

もちろんと引き受けたが、そこから絵を描き起こすには時間がない。既にあるもので何かできないかと考えたときに、このコラムにもよく登場するモグラが浮かんだ。

モグラとは、先ほどの「DIGMOG COFFEE」のキャラクター(実は店長)”ウェルモ”のことだ。北陸新幹線、上越妙高駅のお出迎えキャラクターとして生まれたモグラなので、残念ながら新潟市での知名度は低い。だけど、そもそも僕が故郷の上越のために考えたキャラクター、故郷のことを想うのは新潟県も同じだ。もしかしたらそんな気持ちがこの絵から伝わるのではないかと考えた。昨年秋に、このウェルモをモチーフに故郷のことを想像しながら描いた絵で展覧会を行った。その絵は今回の依頼にぴったりだと思った。それにこのウェルモの間の抜けた姿は、なんとなく見る人を笑顔にする効果もあると感じている。展覧会の絵を中心に再構成するアイデアも固まった。せっかくなので、さらに虹などカラフルな絵柄のものを合わせてデザインすることで新しい作品ができると思った。

こうしてなんとか年末のギリギリの作業から新年の授業開始までに、カレンダーを作ることができた。児童みんなにプレゼントする場面には立ち会えなかったが、後日その時の様子を写真で見せてもらった。

運動会や文化祭など、大きなイベントの思い出には敵わないが、いずれ大人になった時に、そういえばあの時にこんなことがあったと、会議の合間や居酒屋の雑談で思い出した時に、少しでも笑顔になれる記憶になってもらえたら嬉しい。

2月20日(土)BSNラジオ 朝9時~ 「大杉りさのRcafe」で放送予定。

この記事のWRITER

大塚いちお  (東京都在住 イラストレーター・アートディレクター )

大塚いちお  (東京都在住 イラストレーター・アートディレクター )

1968年上越市生まれ。イラストレーター・アートディレクターとして、テレビ、CMなどのイラスト・デザインを手掛ける。子ども番組「みいつけた!」(NHKEテレ)アートディレクションを担当。連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK)タイトルバックイラストなど。子ども向けのワークショップも多数開催。2005年に東京ADC賞受賞。東京造形大学特任教授。
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