私は、地域づくりコーディネーターという役割で、新潟県内を中心に、社会課題を解決しようとする人、団体のさまざまなお手伝いをしています。
特に最近では、学校や企業、行政、NPOなどから声をかけていただいて、SDGsの授業や研修を行うことが多くなってきました。
さて、1回目の今回のコラムでは、「SDGs」の全体像についてお伝えしましたが、今回からは、私が関わりのあるテーマを題材に、SDGsの視点からお伝えしていきたいと思います。
子ども食堂とは?
みなさんは、「子ども食堂」という言葉を聞いたことがありますか?
子どもが一人でも行ける場所として東京都・大田区で始まった取り組みで、多くが無料や低額の参加費で食事と団欒(だんらん)を提供しています。
食事の支援だけでなく、「地域の交流の場」や「子どもの見守りの場」としても機能しています。
この取り組みが有名になったのは、「子どもの貧困対策」がメディアで大きく取り上げられた2015、2016年ごろです。
日本では、子どもの7人に1人が貧困状態にあると言われています。
毎日の衣食住が不足する「絶対的貧困」とは違って、相対的に収入が低いために教育や体験の機会を得ることが難しかったり、学用品など必要なものを購入できなかったり、地域や社会から孤立してしまったり、このような状況を「相対的貧困」と呼んでいます。
子ども食堂は食事を十分に取れていない親子を支える取り組みとして注目されたのです。
子どもが真ん中にいるとみんなが動きだす
現在、全国で約5000箇所の子ども食堂があると言われています。これは児童館の数よりも多いです。「地域食堂」や「みんな食堂」という名称で行っているところもあります。
前述したように、子ども食堂は、「子どもの貧困対策」として認知が広がりましたが、“子どもを真ん中に置いた多世代交流の居場所”でもあります。
実際、子ども食堂を運営している方々は、地域によってさまざまです。
新潟県内では、約70箇所の子ども食堂がありますが、2016年1月にNPO法人にいがた子育ちステイションさんが始めた「ふじみ子ども食堂」をきっかけに広がっていき、大学生たち、社会福祉法人、飲食店、お寺、自治会・コミュニティ協議会など多様な団体が運営する食堂があります。
また、私も協力させていただいた、NPO法人にいがた子育ちステイション制作「NIIGATA子ども食堂白書2020」では、子ども食堂を立ち上げた目的も聞いています。
子ども食堂を立ち上げたきっかけの1番は「子どもの居場所の創設(59.3%)」で、2番目は「子どもの食生活改善(53.7%)」、3番目は「地域住民の社会参加機会(50.0%)」でした。「経済的困窮家庭への子ども支援(44.4%)」は4番目で、相対的には順番は高くありませんでした。
(出典:NPO法人にいがた子育ちステイション「NIIGATA子ども食堂白書2020」)
「地域住民の社会参加機会」が高いことからも、「子ども」を真ん中に置くと、地域に住んでいる人たちは、世代や立場が違ってもみんな一緒に動き出しやすいと言えそうです。
コロナ禍だからこそつながりを
ただし、これだけ広がってきた子ども食堂も、新型コロナウイルスの感染拡大によって、集まって食事をする取り組みが行いにくくなってしまいました。
事実、多くの子ども食堂が休止を余儀なくされました。ただ、一方で、ようやくできたつながりを失わないように、フードパントリーという形式で、お弁当を配布するなどの取り組みに変更しているところもあります。
特にコロナの影響で仕事が減ってしまったり、なくなってしまい、経済的に困窮している家庭が増えてきています。
そうした中で、子ども食堂は「貧困対策」としての役割を高めていると言えるかもしれません。
ただ、大切なのは、居場所としてあり続け、つながりを切らさないことなのかとも思います。
結果として、「貧困対策」という側面が注目されがちですが、学校が統廃合されたり、塾や習い事によって、子どもたちが地域の中で遊んだり、大人と触れ合う機会が少なくなってきています。
子ども食堂は、地域の子どもと大人がお互いにつながり、困ったことがあったら助け合う、誰一人取り残さない地域になる取り組みではないでしょうか。
だから、多くの地域で子ども食堂を始めようと思う人が出てきて、今では、約5000箇所にまで増えてきたのでしょう。
地域で取り組むSDGsの一歩として、子ども食堂が果たせる役割は大きいかもしれませんね。
*7月3日(土)BSNラジオ 朝10時~「立石勇生 SUNNY SIDE」で放送予定です。