はぐくむコラム

ウィルス禍の”子どものうつ”に要注意

SNSでシェア

子どもにもうつ病がある

かつては大人と違って子どもにはうつ病は存在しない、あったとしても非常に少ないと考えられていましたが、欧米や日本の研究によって、今まで考えていたよりは高い頻度で、子どもにもうつ病が存在することがわかってきました。

うつ病とは

うつ病とは、モノアミンという脳内の刺激伝達物質の作用不足という状態が起きていて、言わば、心と身体のエネルギーが枯渇した状態となり、精神面や身体面に様々な症状が出現している状態です。精神症状として、抑うつ気分(子どもの場合は逆にいらいらした気分、むしゃくしゃすることもあります)、興味または喜びの喪失、意欲・気力の減退、知的活動の減退(何も頭に入らない、学業成績の低下)、自責感や判断困難などが出現し、身体症状として、食欲の減退または逆に増加、体重の減少または増加、不眠または睡眠過多、頭痛、腹痛、易疲労感、倦怠感などがあります。子どもに特徴的とされる症状には、行動面の症状として、ひきこもり、不登校、攻撃的言動、家庭内暴力などがあります。幻聴や自殺念慮は大人よりも子どもに多いとされています。症状は朝が最も重く夕方から楽になるという日内リズムがあります。

子どものうつ病の背景にあるもの

発症には家族の不和や離別、死別、養育者の抑うつ傾向・うつ病、親自身が抱えている愛着形成の障害、本人自身の不十分な愛着形成など、家庭環境・養育環境の影響が子どもでは大人に比べると非常に大きく、学校でのいじめや挫折体験、発達障害などの関与も時に重要な因子となります。いずれにせよ、子どもの心身に加わってきたストレスの軽減を目的とした環境調整が非常に重要で、大人と比べると薬物療法の効果は限定的と考えられています。子どもを車に例えれば、車の性能も運転手の技量、そして真面目に運転しようという意識にも全く問題がないけれど、ガソリンが枯渇している状態であれば動かないのは当たり前なのです。それなのに、まわりの大人は車の性能を疑ってみたり、運転手を批判したりしがちです。まずは、燃料タンクにガソリンが満タンになるまでは、しっかりと休ませることが何より大切です。

「コロナうつ」の時代

 昨年来の新型コロナウイルス感染症の世界的大流行により、生活が激変しています。こういった変化は、先行きの見えない状況の中で私たちの心身にとってストレスとなって積もり重なっています。国立成育医療研究センターの最近の調査でも、小学 4~6 年生の 15%、中学生の 24%、高校生の 30%に、そして、保護者の3割にも、「中等度以上のうつ症状」あることが分かりました。さらに、警察庁のまとめによると、2020年の小中高生の自殺者数が統計のある1980年以降最多の499人に増えていました。これは、2019年と比べると100人も増えており、また、年代別では10、20代の増加が顕著で、同じく2019年と比べて522人増えていました。厚生労働省自殺対策推進室は「新型コロナウイルス禍で学校が長期休校したことや、外出自粛により家族で過ごす時間が増えた影響で、学業や進路、家族の不和などに悩む人が増加したとみられる」と指摘しています。

「国立成育医療研究センター「コロナ×こどもアンケート」より

「コロナうつ」の時代におけるこころの健康維持のコツ

日本うつ病学会の公式サイトに、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行下における、こころの健康維持のコツとして、国際学会の提言を掲載しています。対策の要点は、次の11項目です。

  • 毎日決まって行う日課を設定しよう
  • 毎日同じ時刻に起きよう
  • 毎日一定時間を屋外で過ごそう 特に朝の光を浴びよう
  • 外出が困難であれば、窓際で2時間を過ごそう
  • 毎日行う活動は同じ時間で行おう
  • 毎日運動をしよう
  • 毎日同じ時間に食事をしよう
  • 人との交流をしよう
  • 日中の昼寝は避けよう
  • 夜間の明るい光(特にブルーライト)を避けよう
  • 毎日の起床・就寝時間を決めよう

こんなことかと思うかもしれませんが、こういった単純なことが意外に大事なのです。大切なことは、自分の力でどうにもならないことには悩まないようにして、今の自分のできることをやるだけでいいんだというメッセージとして、それぞれの家族で実践できることを心がけてみてください。

*5月29日(土)BSNラジオ 朝10時~「立石勇生 SUNNY  SIDE」で放送予定です。

この記事のWRITER

田中篤(長岡市在住 長岡赤十字病院小児科医)

田中篤(長岡市在住 長岡赤十字病院小児科医)

1954年長岡市生まれ。千葉大学医学部卒業、新潟大学医学部小児科学教室に入局。以降、県内各地の小児科に勤務し、小児疾患全般のほか、小児心身症・不登校・子ども虐待・災害時の子どものこころのケアなどの診療に従事。現在:長岡赤十字病院小児科医。
SNSでシェア

新着記事