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雪の上で昆虫採集⁉ -雪の上の生き物ワンダーランドへようこそ-

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新潟の冬といえば、やはり雪。
雪かきに長靴、手袋にマフラー。外に出るだけでひと仕事、という季節です。子どもたちは雪に目を輝かせますが、大人はつい「寒いし、外は大変だな」と感じてしまうこともあるのではないでしょうか。

一面が白く覆われ、木々は葉を落とし、景色はどこか静かに見えます。
「こんな雪だらけの中に、生き物なんているの?」
「冬の自然観察って、楽しいの?」
そんな疑問が浮かんでくるのも、無理はありません。
でも実は、子どもたちと一緒に楽しむ冬の自然観察は、私にとってとてもワクワクする時間です。なぜなら、雪の上では、ふだんは気づきにくい生き物の姿や暮らしが、くっきりと浮かび上がってくるからです。

今回のコラムでは、私が日頃から子どもたちと一緒に楽しんでいる「雪の上ならではの自然観察」をいくつかご紹介します。さあ、雪の上の生き物ワンダーランドへ出かけてみましょう!

オニグルミの葉痕(ようこん)

まず最初にご紹介したいのは、木の枝についた“この笑顔”。雪の中で枝先を見上げると、まるでにこっと笑っているような顔がこちらを向いています。

これは、オニグルミの葉痕(ようこん)。葉痕とは、葉が落ちたあとに枝に残る痕のこと。葉へ水や栄養を送っていた導管や篩管(しかん)の痕が模様となり、それが目や口のように見えるため、表情豊かな「顔」に見えるのです。

樹木の葉痕は、種類によってさまざまな形をしています。その中でもオニグルミは、私のおススメの葉痕のひとつ。よく見ると、面長の顔、横に広い顔、少し困ったような顔など、同じものは一つもありません。子どもたちには、「自分と同じ顔を探してみよう」と声をかけます。雪の中で枝についた笑顔を探しながら、思わず笑顔がこぼれる観察です。

冬は、哺乳類の観察にもぴったりの季節です。といっても、動物の姿そのものを見るわけではありません。観察するのは、足跡です。夏は草木に隠れてしまい、動物の姿を直接見るのはなかなか難しいもの。でも冬は、雪の上に残された足跡が、生き物たちの行動を教えてくれます。

「ここを通ったのは誰だろう?」
「どこから来て、どこへ行ったのかな?」
写真で紹介しているのは、ノウサギの足跡。

ノウサギの足跡

さて、この足跡、どちらに向かって進んでいるでしょうか?奥からこちらへ?それとも奥に向かって?雪の上では、まるで探偵になったような気分で、足跡を追うことができます。

このように雪の上には、さまざまな哺乳類の足跡が残ります。スキー場では、リフトに乗りながら足跡探しをするのもおススメです。

実は冬の自然観察では、ノウサギの“落とし物”探しも、子どもたちとよく楽しみます。私の写真の手のひらに乗っている、小さくて丸いもの。これはいったい……?
正解は、ノウサギの糞です。

ノウサギの糞

冬のノウサギは、雪の上に顔を出した木の皮や木の芽を、鋭い歯でかじって食べています。そのため、冬の糞は繊維質がたっぷり。
「糞」と聞くと、汚い、臭いというイメージがあるかもしれません。でも、この糞をそっと割って、恐る恐る鼻を近づけてみると……なんと、木の香りがするのです。

まるでお茶の葉のような、やさしく香ばしい匂いに、子どもたちは
「ほんとだ!」「臭くない!」と声をそろえて笑顔になります。

五感を使って観察することで、冬の動物たちの暮らしが、ぐっと身近に感じられます。
ちなみに個人的には、新鮮な糞ほど高級茶葉のような香りがする気がしています。

……あくまで個人的な感想です(笑)。

最後にご紹介したいのは、雪の上の虫たちです。雪の上で活動する小さな虫たちを「雪虫」と呼びます。

今回紹介するのは、体長1.5mmほどのコシジマルトビムシ。雪のない季節は土の中で暮らす、トビムシの仲間です。雪の結晶と比べると、その体がいかに小さいかがよくわかります。

雪の上のコシジマルトビムシ

映像:雪の上を歩くコシジマルトビムシ

そんな小さな虫が、冬眠もせず、雪の上を元気に歩き回っている。不思議だと思いませんか?どうして、こんな寒い雪の上で活動できるのでしょう。

その秘密は、体の中にある「トレハロース」という糖にあります。トレハロースは、細胞の中の水分が凍ってしまうのを防ぎ、低温でも体のはたらきを保つ役割をもっています。雪虫は、こうした仕組みを利用することで、氷点下に近い雪の上でも活動することができるのです。

このような雪虫の観察は冬の自然観察の人気のテーマの一つです。キョロロでは積雪期に「雪虫さがし」というイベントを開催したり、子どもたちの学習利用の際にも実施したりと、雪国ならではの自然観察として、子どもたちが「冬も生き物と出会える」ことを実感できる学びの機会としています。

雪虫を探すこどもたち

雪の上には、目に見えにくかったさまざまな生き物の世界が広がっています。春をじっと待つ木々、雪に記録された動物の足跡、小さくたくましい雪虫たち。冬は、雪の上だからこそできる発見と観察にあふれた季節です。生き物たちは、それぞれの方法で冬を乗り越え、この場所で命をつないでいます。その姿に気づき、知り、新たな発見を重ねることは、地域の生物多様性を理解する第一歩であり、雪国で暮らす私たちならではの自然の学びになるのではないかと思っています。

特別な道具がなくても大丈夫!
ぜひ親子で雪の上を歩きながら、冬の自然をのぞいてみてください。
その一歩一歩が、SDGsの目標にも通じる「身近な自然に目を向ける」気持ちを育んでくれるはずです。

    

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。1月17日は、越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員の小林誠さんです。お楽しみに!

この記事のWRITER

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

1980年、長岡市生まれ。北海道大学大学院環境科学院博士後期課程修了(環境科学博士)。大学時代は北海道をフィールドに北限のブナ林を研究。現在、十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ学芸員。里山の生物多様性をキーワードに教育普及、体験交流、観光や産業などの側面から、地域博物館を活用した地域づくりに挑戦中。2児の父親。
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