11月末から続いた干し芋加工が、今週でやっと一区切りになる。去年秋に新しくできた食品加工所「ウーファキッチン」で、今シーズン、14人の女性農家さんたちが働いた。これは私にとって、大きく意味のあることだった。
豪雪地、冬の仕事がない私含む、女性農家さんたち。男性農家さんたちは深夜、除雪や遠方のスキー場で勤務するなどしているが、さすがに子育ても家庭もある女性には厳しい。
ただでさえ、女性農家は少なく日常的な繋がりが薄いからこそ、居場所があり、成長するためにコミュニティの力が必要だった。
そんないろんな悩みを解決できる居場所づくりを目指し、先輩農家さんと共同でwomen farmers japan(ウーマンファーマーズジャパン)(略してwofa/ウーファ)というコミュニティを2020年春に、そして2021年秋にウーファキッチンを完成させた。
年に数回、ゼミや勉強会で顔を合わすメンバーだったけれど、加工所の稼働が始まってから毎日会うようになった。
そして、毎日のお昼ごはんの時間が楽しみになった。これは私の人生において、衝撃的な出来事だった。
実は恥ずかしいことに、かつて私は「人類の99%は苦手な人かもしれない」と思っていた。人と接すること、対面でコミュニケーションすることが苦手だったからだ。耳から入る情報(声)が意味のある言葉というより音に聞こえるから、「話聞いてる?」とよく言われたり、聞き間違いをすることが多い。雑談であっても、人の聞くときは集中するので、とても疲れる。
そのため1人でいることが好きで、ましてや1人で自然の中で農業をすることは最高だった。会社員として大勢の中で働くなんて本気で無理だと思っていた。
そんな私が毎日たくさんの人たちと共に働いている。加工所で人と働くことが「楽しい」と感じている自分に驚き、これは夢なんじゃないかと何度も思った。
不思議な感覚だった。
かつての私流の「知り合いの作り方」と言えば、移住女子や、若手農業者のグループなど、プロジェクトに由来するチームを作ることだったように思う。事業があるから、人が集まる。事業を通じて、人と接する。事業が終わってしまえば、自然と遠くなってしまう……。
今このチームも、加工とか農業とかいう軸で集まっているメンバーかもしれない。けれどwofaでは、仕事以外の話を、なんだか、話してみたくなる。みんな明るくて、元気で、真面目で、でもそれぞれ母として女性として農業者として悩みながら生きている等身大のひとりひとりに、もっと力になりたいという気持ちが湧いてくる。
外向けの書類を書くときにもメンバーのことを「スタッフ」や「従業員」という表現をすることに違和感を感じる。
ではもっとフィットする言葉はなんだろうか?
戦闘チーム?仲間?
それとも友達……?
あれ、私そういえば、移住して農業始めてから、友達っていたんだっけか?
そんなことに気づき、帰宅して6歳の娘に話した。
「お母さん、友達いないかもー」
「そうなの?あさちゃん友達いっぱいいるよ」
「そうなん?友達ってどう作るん?」
そんな私の突然の質問に、娘はゆっくり答えた。
「まず目と目を合わせて、それから、自分の気持ちを話すんだよ」
なるほどー!!! 膝を打った私。
目と目を合わせて、自分の気持ちを話す。確かにそうだった。このメンバーには、3年前に加工所が失敗して辛かったこと、実は別に叶えたい夢があること、自分は嘘つきであること、この時間を大切にしたいことなど、今までにないくらい、たくさんの「ほんとうの気持ち」を話してきた。
だから、一緒に働くこと、学び高め合うこと、そして一つ一つの時間がなんだか心地よく感じていたのだろうか。
と同時に、私は娘には目と目を合わせて、自分の気持ちをちゃんと話せていただろうかと思った。
「早く食べよう」「早くお風呂入ろう」となんとなく指示するような言葉が多かったかもしれない。忙しすぎて、一緒に何かを楽しんで、「私はこう思う」というお互いの気持ちを交換し合うことが少なくなっていたかもしれない。
なのに、ともだちの作り方は、娘が一番よく分かっている。
「あぁ、なるほどだよ、あさちゃん」
「でしょ!だからあさちゃんは、みんながともだちだよ!」
「いやー、すごい。すごいね!ありがとう!」
苦手だからと殻を閉じていたのも、周りを避けていたのも私の方だった。
娘とともに、私の方が、まだまだ修行中だ。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」お伝えしています。
3月19日は、佐藤可奈子さん のお話をお楽しみください。