先⽇、輸⼊⾷材店で、「ハラル認証マーク」がついた商品を探してみました。みなさんの⾝近では、どんな ところ(もの)でこのマークを⾒たことがあるでしょうか。あまり馴染みがないマークだと思う⼈もいるかも しれません。しかし、イスラム教を信仰している⽅々(ムスリム)にとって、⽣活で触れるものごとがハラル (神に許されたもの)であるかどうかは重要なことであり、このマークがついている⾷品や製品は、「ハラルですよ」ということを⽰す⼤事なマークとなっています。
これまで、それほどハラルについて気にしたことがなかったのですが、今夏にバングラデシュへ渡航する際 に、「ハッ」とするきっかけがありました。現地でお世話になる⽅への⼿⼟産を⾃分の好みで選ぼうとしてい ると、同⾏者から「お⼟産を⽤意するなら、原材料をよく⾒るように」と助⾔がありました。ムスリムが、宗教上の理由で豚⾁やアルコール等が禁じられていることはなんとなく知っていましたが、⽬に⾒える材料だ けでなく、使われている油(乳化剤を含む)や調味料(例えばポークエキス)などにもしっかり⽬を向ける必 要があることをそのときに知りました。結局、お⼟産には「新潟県産⽶100%のおせんべい」を選びました が、これにも、みりんが使われていないか、など原材料に気をつかいました。(現地では、新潟の美味しいお ⽶から作られているお煎餅を⼤変喜んでもらえました!)
このような⾃⾝の経験から、⽇本の中での「ハラル事情」に関⼼をもち、インドネシアから⽇本に留学して いる友⼈にも経験談を尋ねてみました。すると、「ファミレスでシーフードパスタを頼んだ時に、店員さんに シーフード以外に動物性の⾷材が⼊っていないかどうか確認したの。店員さんは『⼊っていない』と⾔ったん だけど、運ばれてきたお⽫には細かく切った豚⾁が⼊っていて、とても驚いた。それ以来、そのお店にはめっ たに⾏かなくなっちゃった」という「困ったエピソード」を話してくれました。また、関東で教員をしている 知⼈からは、給⾷に関する話を聞きました。その学校では、⾷物アレルギーの児童への対応にはマニュアルが あるそうですが、ムスリムの家庭からの「⾷材の詳細を教えてほしい」という要望については、献⽴から⾃分 で調べるか個⼈で弁当を持参という曖昧な対応に留まっているそうです。こうした実際の話(社会の課題)を 聞いて、地域社会でも学校の中でも「多⽂化化」が進んでいる現代だからこそ、⾃分(⾃国)の常識や当たり 前だけで判断せず、相⼿のニーズを理解することが必要だと感じました。加えて、誤解や偏⾒を避けるために 正しい情報を知る重要性を感じています。(※両エピソードは個⼈の経験に基づいているため、どの企業や学 校も同じような対応ではありません)
10 ⽉に RING*のセミナーで、「五感で学ぼう!共⽣をめざした社会づくり」をテーマに、ハラルフードや異⽂化について学ぶ企画を実施しました。バングラデシュ出⾝の⽅を講師にお招きし、チキンスパイスカレーを 参加者全員で調理し、いただきました。さまざまな⾷材に触れて、実際の話を聞いて、においを嗅いで、⼿を 使って⾷べて・・・まさに「五感」をフル活⽤した時間となりました。会の中で印象的だったことは、「感謝 をする」「命をいただく」という⼼が所々に込められていたことです。バングラデシュの⾔葉で「いただきます」には「神に感謝を」という意味があるそうです。講師の先⽣は、「全てが神からの贈り物。感謝の気持ち が⼤切」とおっしゃっていました。なんだか、カレーの中の⾷材ひとつひとつが輝いて⾒え、いつもに増して ⾷事が美味しく感じられました。
セミナーでは、こうした⾷の話をはじめ、お祈りの意味や⽂化の話も聞かせていただき、ムスリムがどんな価値観をもって⽣きているかということへの理解が深まりました。また、「いただきます」と⾔って⼿を合わ せる私たちの⾵習にも似たような意味があるように思え、「違い」と「同じ」を感じることで他国や異⽂化へ の距離の近まりも感じました。
「イスラム教に配慮されているだけで、他の料理や⾷べ物と⼤差なかったので驚いた」 「命に感謝して⾷べる、当たり前のことのようで当たり前ではない世間になっていると感じるので、⼤切さをもう⼀度考える機会をもらえてうれしかった」
これらはセミナーに参加した⼩学⽣や⾼校⽣の感想の⼀部です。メディア等の情報だけではなく実感や体験 は、先⼊観や固定観念を取り払うことにもつながると感じました。
「関係ない」ではなく「知る」ことから−この⼩さな意識が、ともに⼿を取り合える社会をみんなでつくっ ていくのかもしれません。
*RING(にいがたNGOネットワーク国際教育研究会RING)・・・持続可能な地域・社会の担い手を育てることを目的に、セミナー等の開催を通して、学校現場でのSDGsに関する教育の充実や市民のグローカル意識の醸成をめざして活動している。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。12月7日は、にいがたNGOネットワーク国際教育研究会 RING 企画副委員長の関 愛さんです。お楽しみに!