フィンランドで生まれた「ムーミン」の物語は、世界中の人に愛され、日本ではテレビアニメにもなりました。ムーミン谷で暮らすたくさんの仲間たちは、みんな個性的です。

友だち思いで勇敢なムーミントロール。冒険家のパパと、おもてなし上手のママ。思ったことはズバリと言う毒舌のミー。おくびょうなスニフ。自由と孤独を愛する旅人スナフキン。顔もスタイルも性格もぜんぜん違う仲間たちですが、ムーミン谷では、みんなありのままに自分らしく生きています。

本書には、9つの短編が入っています。特に心に残ったのは、「目に見えない子」というお話。ある日、姿が消えてしまったニンニという女の子が、ムーミンの家にやってきます。おばさんから毎日、氷のような皮肉を浴びせられ、体も心も消えてしまったのです。ニンニはムーミンの家族やミーと暮らすうち、少しずつ言葉と感情を取り戻し、姿が見えるようになっていきます。ニンニの心を癒したのは何だったのか、ぜひお読みください。

自分によく似た人や、憧れの人をさがしたり、キラリと光る自分にぴったりの名言を見つけたり、何度読みかえしても新しい発見があるシリーズです。

田村 梓（新潟市の小学校司書。子どもたちと一緒に本や昔話を楽しんで、30年になりました。）