大人の本棚・こどもの本棚

奇妙でフシギな話ばかり

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ファンタジックな9編の作品による短編集です。各話の世界観は奥深く、短編とは思えないような読後感が残ります。

タイトルのとおり、物語には「奇妙でフシギ」なキャラクターがたくさん登場します。ユニコーンや天使、エルフや小人、さらには歩く死者や吸血鬼のような存在、そして優しい人間や欲深い人間も。彼らが織りなす物語は、時に光り輝く神聖さをまとい、時に切なさやもどかしさを残しつつ語られます。

幻想的な世界ですが、登場するキャラクターの感情がとても豊かで、人間味のあるところも、この作品のおもしろいところです。
例えば「ぴっかぴかの部屋」では、散らかし屋のジェイミーときれい好きの小人が大ゲンカをします。怒り心頭な一方、ジェイミーはきれいな部屋に快適さを、小人は片付けに生きがいを感じ、お互いに意地を張りつつも歩み寄っていきます。

「群れを継ぐ」の主人公「ぼく」は、幼い頃に家族のもとを離れた父親と思わぬ形で再会します。殺したいほど憎いのに、愛してほしいと願ったり、恐怖を覚えつつも好奇心を募らせたり。複雑な気持ちに「ぼく」自身も困惑してしまいます。

どの物語も、読み進めるほど喜怒哀楽様々な感情が伸縮を繰り返し、気付けばすっかりその世界に入り込んでいることでしょう。
作品の魅力をもうひとつ。それは、読者の想像力をかき立てるような、物語の余白がたっぷりあるところです。箱の中身は?この儀式の意味は?主人公のこの後は?この世界の未来は?…と、大小様々なことが気になり、読み終わった後もなかなか本の世界から戻れません。

もしこの本を読んだ人と会ったら、お互い想像したものを伝えあうというのも楽しそうですね。想像したものには、正解も間違いもありません。「星条旗―かつての栄光」のような暗い世界を現実にしないためにも、自分なりに考えたり想像したりして、物語を楽しんでみてください。一読して面白く、読み返せばさらに引き込まれる、魅力ある一冊です。

 

推薦者:佐藤 江理子(新潟県立図書館司書。ユースコーナー担当)

新潟県立図書館のホームページにBSNキッズプロジェクトの「大人の本棚・こどもの本棚」で紹介された本のリストが紹介されています。こちらもどうぞご利用ください。

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