仕事と育児の両立、難しいですよね。大変ですよね。先日読んだ、ある本でも実感しました。科学的に解明されつつあり話題の「幸福学」です。
子育てしながら働く日本人女性の幸福度が低いことが挙げられていたのですが、その原因は社会的要因が大きいとのこと。つまり、昔から根付いている「女性は子育てや家事をするのが役割」と言われる”集団主義的な価値観”と、「女性も男性と同じように能力を発揮して活躍すべし」という、グローバル化によって台頭した”個人主義の価値観”のはざまで苦しんでいるのが、今の日本の女性たちなのです。
私自身、その説にはとても深く頷くばかり…。ただでさえ男性社会の農業。農業法人ならまだしも、事業主として自分で農業をしていると代わりもいません。その道を選んだものの、結婚や子育てで住まいや暮らしが変化する中で、途中で意欲をくじかれたり、心が折れたりする出来事も多くあり、さらに安すぎる農産物価格により努力が報われないこともある。女性農業者がその道を続けていくのは、なかなか困難だと、我ながら身を以て痛感しています。
仕事か家庭かどちらかを選ばねばならないような心理状態は、想像以上に精神的苦痛をもたらします。実際は、両方叶えて、幸せになりたいのに…。
幸福学の研究では「収入の多寡に関わらず、家事育児に大きな影響が出ない範囲で働き、社会に貢献する人」が子育て女性の中で最も幸福度が高い結果が出ています。振り返れば、私は”家事・育児”を犠牲にして働きすぎていました。
実は一昨年、8年続いた干し芋加工(委託加工)が軌道に乗ったことをきっかけに、自社加工所を建設する挑戦をしました。しかし、結果は失敗しました。新築・機材込みで2,000〜3,000万ほどの見積もりにも、腹をくくって地域のためにがんばろうと踏み出したところで、着工直前に中止となりました。建設予定地の農家以外の方とのコミュニケーション不足により不満が噴出したこと、子育てしながら運営できるのか不信感を抱かれたことなど、様々な要因が重なりました。干し芋事業を共に行っていた連携農家や仲間もいましたが、とても孤独でした。
この事業に向けて、家庭もかなり犠牲にしてしまいました。それぐらいのエネルギーがないと成し遂げられない大きなことでもありました。その後、私はなんのために農業をするのか、私にとっての幸せはなんなのか、毎日問い続けました。
心が立ち直りかけた頃、私のような女性農家の挑戦を後押しするための共同加工所を作るから、そこでゆっくりステップを踏んでみないかと、ある先輩女性農家さんが声をかけてくれました。私の失敗が噂話になるなか、唯一行動として動き、助けてくれたのは、やはり同じ「女性農家」でした。
この加工所の肝となっているのは、女性のワーキンググループを作ることとのこと。学びと経験を共有し、成長し合うグループ活動が加工所を下支えします。地域から少し離れたところで、女性たちが自由に能力を伸ばすコミュニティ。このコミュニティからまた、女性たちの挑戦の連鎖が生まれるのでしょう。挑戦に孤軍奮闘する女性たちには、基地が必要です。もう一度、スタート地点に立って、敗者復活戦に次は等身大で挑めればと思います。
2月1日(土)あさ9時~BSNラジオ「大杉りさのRcafe」で放送予定