SDGs de はぐくむコラム

部活動×ミュージアム~カガクする子どもたちのまなざし~

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前回のコラムでは【博学連携が育む子どもたちの多彩な学び】と題して、博物館を利用した子どもたちの実践的な学びについて紹介しました。今回も引き続き「博学連携」の実践例として、部活動とミュージアムとの連携について紹介したいと思います。

「森の学校」キョロロが位置する十日町市松之山には、小規模小中一貫校まつのやま学園(十日町市立)があり、地域資源を活かした特色ある部活動が展開されています。その中の一つが、地域内の豊かな里山の自然環境と自然科学館キョロロを活用した「自然科学部」です。

顕微鏡を使った生物の観察

まつのやま学園では小学5年生から中学3年生に放課後の部活動があります。自然科学部は放課後の約1時間、部員の興味関心や季節の自然の特徴も考慮しながら、学校やキョロロを活動場所として自然を探究する活動を展開しています。野山に分け入り生き物を採集したり、室内で顕微鏡を覗いたり、生体展示する生物のお世話をしたりと、週3~4回の活動内容は多岐にわたります。

シマヘビの観察

自然科学部の活動として近年力を入れているのはアメリカザリガニの捕獲です。昨年12月のコラムで「6月から〇〇が禁止された身近な生き物」と題して、アメリカザリガニの外来種としての影響や捕獲活動についてコラムでご紹介しましたが、自然科学部の活動としても地域内のため池で捕獲活動を展開しています。

様々な場所で捕獲活動をしていくと、部員からはいろいろな気づきや疑問がうまれてきます。「この池のザリガニは、なぜ殻の色が薄いのだろう?」「ザリガニを効率的に捕獲できるエサは何だろう?」「捕獲を継続してもザリガニはなぜ減らないのだろう?」。こんな疑問を各々の探究テーマとして夏休みの自由研究でさらに調査・実験する部員もおり、作業で終始するだけではなく科学的に自然を深堀りするシーンにもつながっています。

アメリカザリガニの捕獲活動

捕獲したザリガニの一部は「命を美味しく頂く」ことを部活動で実施しています。調理もサイエンス。「どう調理したらザリガニを美味しく食べられるのか?」も自然科学部の大切なテーマです。これまで塩ゆで、フライ、天ぷら、アヒージョなど、様々な調理法を試してきました。一部の部員からは「食べ飽きた」との声も聞こえています(笑)

アメリカザリガニの調理

キョロロでの自然科学部の活動は、学芸員らが調査・分析方法、自然の解説などの側面から活動を毎回サポートしています。自然科学分野の専門家から直接様々な話を聞きながら、子どもたちの自然を観る観察眼もどんどん鍛えられていきます。

現在まつのやま学園では、このような地域の自然環境や施設を活用した特色ある教育活動を活かして、地域外に在住する小中学生が就学する「雪里留学」制度を実施しています。この春、市外から雪里留学で就学した児童は、自然科学部への入部を留学の動機にしており、部活動×ミュージアムの取組みが、特徴的な教育資源となっていることを改めて感じています。

少子化の進行、多様な学びのニーズなど、変わりゆく時代の中で、実践的で多様な学びの機会として博物館と学校との「博学連携」がますます期待されています。来週の自然科学部ではどんな発見があるでしょうか?カガクする子どもたちのまなざしをこれからも支援していきたいと思います。

 

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。5月25日は、越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員の小林誠さんです。お楽しみに!

5月25日(土)ラジコはこちらから!

 

この記事のWRITER

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

1980年、長岡市生まれ。北海道大学大学院環境科学院博士後期課程修了(環境科学博士)。大学時代は北海道をフィールドに北限のブナ林を研究。現在、十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ学芸員。里山の生物多様性をキーワードに教育普及、体験交流、観光や産業などの側面から、地域博物館を活用した地域づくりに挑戦中。2児の父親。
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