はぐくむコラム

ブナの森のようちえん –子どもと自然体験を楽しもう!-

SNSでシェア

先日、イベントで未就学の子ども達、保護者の方々と秋の森を歩きました。里山の森の足元には、ドングリやキノコなど小さな秋がたくさん…。落ち葉の上をカサカサと歩きその音を楽しむ子、カエルを追いかけ自慢げに見せてくれた子、落ちていた枝を終始大事に手から離さなかった子、小さな秋を楽しむみんなの顔はとても生き生きとしていました。

「森のようちえん」という言葉をご存知でしょうか?「森のようちえん」とは自然体験活動を基軸とした子育て・保育、幼少期教育の総称で、北欧での野外教育を発端に1980年代から日本でも知られるようになった保育・幼児教育の取組みです。森をはじめとした自然環境を、幼児期の子どもたちの育ちの場として位置付けた取り組みとして、近年関心の高まりを見せています。

森のようちえんは、実際に園舎などの施設を使った日常活動型の他、イベント型など多様な形態があり、実施主体も認可幼稚園・認可保育園、認可外保育施設、自主保育、NPO法人、自然体験活動団体や社会教育施設など多様です。「森のようちえん」に総称される自然保育や幼児教育の取組みは、現在全国的に社会的な関心の高まりを見せており、子育て支援策や移住定住といった地域振興策として位置付ける自治体も増えてきています。新潟県内では、新潟市、三条市、長岡市、柏崎市、上越市に日常活動型の森のようちえんがあり、地域の自然の中で特色ある保育・幼児教育活動が展開されています。また、幼児期を対象としたイベント型の森のようちえんも県内各地で開催されています。

キョロロでは2013年度から、ブナ林やその周辺の自然環境を舞台とした幼児を含む家族向けの自然体験イベント「ブナの森のようちえん」を始めました。ブナの森のようちえんは、幼児期の子どもに自然と触れ合う機会を、また保護者の方々に身近な自然の知識や楽しみ方を提供することを通じて、家庭保育の場における自然体験を促進する事を目的とした自然体験イベントです。開館10周年記念事業の一つとして開始し、開始後5年間は年4回の季節開催でしたが、ニーズの高まりやリピーターの声を反映した形で2017年から年6回、昨年からは年10回と実施回数が増加してきており、当館の人気イベントの一つとなっています。

ブナの森のようちえんには、おんぶや抱っこで参加する0歳児から、アクティブに野山を駆け回る年長さんまで、幅広い未就学児が参加します。また、幼児として参加していた子どもたちが、小学生に成長した後に「子どもスタッフ」として活動をサポートする側として参加してくれています。自然の中での子どもたちの「気づき」を大切にし、季節ごとの里山の動植物の観察や野遊びを五感を使って親子で楽しみます。昆虫採集やドロ遊び、落ち葉のシャワーや木登りなど、毎回お子さんと森での楽しい一時を共有していただいています。保護者を対象としたアンケートからは、「子どもがあんなに自然の中で喜んでいる様子ははじめて見ました。」「自然の中で遊ぶことが、こんなにも楽しいとは思わなかった。」「今回の経験を、自然の中で子どもと遊ぶきかっけとして活用したい。」など、自然の中で遊ぶことに対し、お子さんの様子を通じて肯定的に捉えご回答をいただく保護者の方非常に多くいらっしゃいました。

これから私たちが持続可能な社会づくりの担い手になっていく中で、自然の有限性・多様性・循環性を理解することはとても大切なことです。自然の中での原体験は、自然を理解し自分なりの自然観を育む上で重要なプロセスだと考えられています。幼少期に豊富な自然体験を経験することは、自然に対する関心や態度の向上にとどまらず、心理的・社会的・徳育的・身体的能力の向上に影響があることが多くの報告によって指摘されています。と同時に、子どもの自然体験の頻度や充実度には大人の影響が大きいことも指摘されています。しかし、普段の生活で自然と直接関わる機会はなかなか限られており、日常の中でどっぷり自然体験をすることは困難となってきているのも現状です。生涯にわたる連続的な自然との関わり・環境教育のスタートとして、森のようちえんのような自然を子どもの育ちの場として位置付けた幼児教育の取り組みは、今後ますます社会の中に根付いていく事が期待されています。

皆さんのお近くでも、幼児を対象とした自然体験イベントが開催される際は、ぜひ親子で身近な自然を楽しんでいただければと思います。自然の中でいろんな発見を楽しむお子さんの生き生きとした姿に、きっと出会えることでしょう。

この記事のWRITER

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

1980年、長岡市生まれ。北海道大学大学院環境科学院博士後期課程修了(環境科学博士)。大学時代は北海道をフィールドに北限のブナ林を研究。現在、十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ学芸員。里山の生物多様性をキーワードに教育普及、体験交流、観光や産業などの側面から、地域博物館を活用した地域づくりに挑戦中。2児の父親。
SNSでシェア

新着記事