はぐくむコラム

ブータンから学ぶ子どもたちの自尊心と幸福感

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クズザンポー(こんにちは)!

前回のコラムでは、国民総生産量よりも国民の総幸福量を追求した国づくりを進めてきたブータン王国での滞在エピソードを紹介しました。今回はブータン話の続編とともに、「自尊心」をキーワードに日本の子どもたちの幸福感に着目します。

ブータン滞在中に、小中学校や職業訓練校などいくつかの学校を訪問しました。そこで出会った子どもたちに、将来の夢について尋ねると、決まって挙がる職業が、教師、医者、エンジニアでした。これらの職業を答える理由は、農村を離れ都市に行きたい、身近な憧れの存在である、など様々あります。ただし、どの子にも共通していたのは「国の役に立ちたい」という自尊心があることでした。外国人である私に誇らしそうに夢を語ってくれました。

ブータンの小学校にて。チベット仏教を信仰するブータンでは、毎朝お祈りの時間があります。教育の仏様に向かってお経を読みます。

小学校を訪問した際に、子どもたちからしきりに日本のことを尋ねられました。「sushi」「samurai」「anime」など日本について知っている単語を挙げる中、ある子が「日本のイメージ」について私のノートに次のように書いてくれました。「街はせわしい。東京には高いビルが立ち並び、新しい車がたくさん走ってる。混雑している街に行ったらきっと道に迷ってしまうだろうなぁ…(中略)…もし、日本に行くチャンスがあったら、日本の文化と伝統を学びたい。」このメモから、外国から見た日本を知るとともに「日本人が誇る”日本”ってなんだろう」と足元を知ることの価値について考えさせられました。

子どもたちの自尊心や社会参加意識の醸成は、「自分の夢」を意識することと、自国や地域のことを知ることから始まるのかもしれません。

ある子が書いてくれた「日本のイメージ」。Samurai(侍)と刀の絵が描かれています。

さて、日本の同じ世代の子どもたちは、どんな言葉で自分の夢を他者へ語ることができるでしょうか。日本財団が日本を含む9か国の17歳~19歳を対象に2019年に実施した「社会や国に対する意識調査*」において、興味深い回答を目にしました。「自分は責任がある社会の一員だと思う」「将来の夢を持っている」「自分で国や社会を変えられると思う」といったいずれの質問においても、日本の10代が「はい」と回答した割合はダントツの最下位だったのです。日本の10代の若者たちの幸福度の低さとも受け取れるこの結果に、もっと自尊感情や自己肯定感-「私にもできるぞ!」という気持ちを育む機会の必要性を私は感じています。そして、それは学校教育の中だけでなく、家庭も含めた地域社会全体で取り組んでいかなくてはならない課題でしょう。

では、自己肯定感や幸福感、「私にもできる」という気持ちを育むにはどうしたらよいのでしょうか。私の話になりますが、高校で教員をしていた時代、そして自身が子育てをしている現在においても、”ホンモノ”と出会う経験づくりを大切にしています。ドキドキ・ワクワクと心が動く経験は、知識や理論を超えたインパクトとして自分の中に残ります。ロールモデルとの出会いは、やりたいこと、なりたい自分を見つけるきっかけになるかもしれません。何より、”ホンモノ”を通じて社会を見ることは、自分と社会をつなげて考える思考力や社会課題に対してできることを実践する行動力を育むことにも繋がります。こうした学びが人の心を豊かにし、自己肯定感や幸福感、「私にもできる」という気持ちを高めてくれると信じています。

計算力をつけるためにドリル学習をしているところ。集中力がすごい・・・!

*18歳調査「第20回‐社会や国に対する意識調査‐」(2019)
https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/11/wha_pro_eig_97.pdf

 

この記事のWRITER

関 愛(長岡市在住/にいがたNGOネットワーク国際教育研究会RING企画副委員長)

関 愛(長岡市在住/にいがたNGOネットワーク国際教育研究会RING企画副委員長)

高校教員時代に、日本国際協力機構(JICA)による教師海外研修に参加し、ブータン王国へ。その後も、国内や海外へ飛び回りながら知見を広げ、国際理解教育/開発教育の実践力向上を図ってきた。現在は、新潟県キャリア教育連携促進事業(出前講座)や総合学習コーディネーター等を通じて、学校の「外」から教育に関わりながら“持続可能な社会の創り手“を育むべく活動を展開している。旅好きな性格。家庭では、小学生男児の母として、子育てという「人生の旅」を楽しみ中。
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