はぐくむコラム

母になり、親の気持ちを知る

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「お父さんは優しいよ。ほんとに優しい人なんだわ。結婚してほんとに良かったって思った」

母が初めて、深い深い声でしみじみ言ったこの一言に、涙がこみ上げて、電話口で、返事もできないほどに嗚咽した。

子供の頃から父と母は、仲は良い方だと思っていたが、それでも色々なことが積み重なって、良い時ばかりじゃいられなかった。

母はよく私に父の愚痴をこぼしていた。私は優しい父が大好きだったが、そんなつもりはなくても母を結果的に苦しめてしまうような父は嫌いだった。同時に父の愚痴を言うときの母もあまり好きではなかった。大好きな両親だからこそ、そんな時に子どもはすごく胸を痛める。

だから、母の辛さを聞いてあげることが、私の役目だと思って黙っていつも聴いていた。

23才で、私が結婚して家を出るまで、ずっと母のいろんな愚痴を聴いていた。その後、子どもができて、母の気持ちが少しずつわかるようになり、子育てがどんなに大変なもので、でもそれ以上にどんなに幸せか。また同時に、夫婦の難しさも知った。子どもには見えてこない部分の苦しさや、それだけじゃない幸せ感も知った。

あれから25年。この年齢になると子どもの時と違い、ずいぶんと母の複雑な心情がわかるようになってきた。

だから最近は年を取ってきた両親のためにもっと親孝行しなくては…と。新型ウイルスのさなかということもあり実家に行けないので、母の誕生日の前日、久しぶりに電話をしたのだ。

元気ではあるけど年老いた両親なので、しばらく連絡していないと体調が心配だから、ドキドキしながら電話をかける。

電話をすると父が出て「お母さん体調悪いんだよ」という。母にかわってもらうと、あんなでこんなで大変だと、体調の不調を詳しく説明してくれた。どんなに苦しかっただろうかと思いながら聞いていたら「特にすごくつらくて寝ることもできないような時、お父さんがいてくれて寝れて助かった」と。そして出た一言が冒頭の言葉。

「お父さんは優しいよ。ほんとに、お父さんと結婚して良かったと思う」。

その言葉を聞いた瞬間、子どもにとって、この言葉が一番嬉しいのかもって思った。とても満たされる感じがした。そして、心から思った。二人の子どもに生まれてきて良かったと。

これから、私の娘達も結婚して子どもができて、私の気持ちがわかる時が来るだろうか。結婚生活や子育ての苦労も楽しさも味わっていくだろうか。そしてそれをまた、見守る幸せがこれからの私の人生で初めて訪れる。その時にまた、結婚し子育てをがんばる私を応援してきた母の気持ちがわかるのだろう。

私も初めてのことがこれからもまだまだ続く。そのたびに、両親に思いをはせる。あなたもこんな気持ちだったのだろうかと。そのひとつひとつを味わいながら、これからも人生を生きていきたい。

両親への感謝と共に。

 

この記事のWRITER

新保まり子(新潟市在住・多世代居場所事業代表)

新保まり子(新潟市在住・多世代居場所事業代表)

1970年新潟市生まれ。子育て中の孤独感から1999年、育児中のママとともにママの心が元気になる毎日型の居場所・子育て応援施設「ドリームハウス」を新潟市西区に設立。2017年、多世代交流、障がい者の居場所確保をめざす企業も設立し、様々な地域で居場所作り応援。 2016年 県弁護士会 人権賞を受賞。現在: NPO法人がばじこ理事長 ドリームハウス代表 子守唄シンガー
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