夫婦って何年経っても、分かっているようで分からないものです。私がそれを実感したのは、地震の液状化被害で住んでいた家に住めなくなり、建て替えることになったことからです。

建築中
地震の後に色々考えた末に、同じ場所に小さな家を建てることに決めました。まさか、60歳を過ぎ、夫も定年を迎えたのに家を建て替えるなんて思いもよりませんでしたが。
最初は「これからは二人でどんな暮らしをしようか」「小さな平屋がいいね」と、ワクワクしながら話しをしていました。ところが、いざ具体的に設計が始まると、待っていたのは驚くほどの価値観のズレでした。
間取り問題では、私は寝るときに音が聞こえるのが嫌なので、寝室の位置は隣の給湯器の近くは避けたいと思いました。ところが夫は「何でそんな音が気になるのか分からない。それより、全体の位置関係を考えたら、こっちがいいでしょう」と言います。「小さな家だし、建ててしまったら動かせないのだから、気になるのよ」と私も譲りません。この件は、夫が折れました。

建築中
そして、ショールームでは、調理台はどんな材質がいいのか、コンロのタイプはどれにしようか。トイレに関しては自動洗浄をつけるか、温水洗浄便座のスイッチはどのデザインにするか。お風呂場の水栓の形やシャワーのタイプ。細かなことを次々と選んで決めなければなりません。その度に、いちいち意見がぶつかるのです。
私は「これからの年齢を考えたら、家事は楽なほうがいい。食洗機は絶対に入れた方がいいし、換気扇も掃除が楽な方がいい」と主張しました。でも、夫は「いや、2人分の食器くらい手で洗えばすぐ。換気扇も俺が掃除する。その分の予算を別に回したい」と譲りません。食器はいつも彼が洗うので信用できます。でも、換気扇の掃除は一度もしたことが無いのに本当にやるのでしょうか。結局は私がやることになる姿が目に浮かびます。とはいえ、言ったからにはやっていただきましょう。ここは私が折れました。
結論が出るまで、主張し合ったり、「何でそこにこだわるのか分からない」「分からないなら、こっちにしよう」と言うと「分からないから納得できない」と言い合ったりする私たち。
それを見ていたショールームの方は、「よくあることです」と微笑みながら、「旦那様が奥様をショールームにおいて車で帰ってしまわれたので、タクシーをお呼びしたこともあります」と話してくれました。
また、建築事務所での打合せでも、外壁の色、壁紙の色、ライトの種類やコンセントの位置等、ことごとく意見が合わない。帰る時に担当者の方から「上手に間に入れなくてすみません」と、申し訳なさそうに言われてしまいました。
これまでの結婚生活で、夫は定年まで、ほとんど単身赴任でした。一緒に生活した時間が少ないので、多少の価値観の違いは織り込み済みのつもりでしたが、まさか家を建てるにあたって、ここまで対立するとは。友達には、「新居が出来るころには、離婚しているかも」と話すほどでした。

ケンカ
家が出来て落ち着いた今、ふと思うのです。家づくりでぶつかった、あの沢山の選択肢は、これからどう生きていきたいかをお互いに確かめる大切な時間だったのではなかったのかと。
結婚した当初は、お互いが育った環境や過去の経験が違うので、「え、普通そうなんじゃないの」という自分自身の普通と相手の普通の違いが生活の隅々に見えます。例えば金銭感覚の違い。家事のやり方や分担。掃除や片付けの頻度や程度。実家や親戚との付き合い方。自分の時間の持ち方などです。そこを生活しながら時間をかけてすり合わせてきたように思います。話し合う中でなぜそう思うのかを知ると理解できることもありました。

完成(玄関)
日々、お互いに価値観が違うことを前提に、小さな対話を重ねていく。どちらが正しいかを争うより、譲れない部分を理解しあったり、ときには諦めたりしながら、お互いの考えや価値観を少しずつアップデートして、新たな価値観を一緒に作っていけたらいいのではないでしょうか。
還暦を過ぎてもなお、「へえ、あなたはそんな風に考えていたの」とお互いに驚きあえるから夫婦は面白いのかもしれません。

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。8月8日は、新潟市在住 にいがた子育ちステイション理事長 /子育て支援ファシリテーターの立松有美さんです。お楽しみに!
立石勇生 SUNNY SIDE | BSNラジオ | 2026/10/17/土 10:00-11:00 https://radiko.jp/share/?sid=BSN&t=20261017100000
