SDGs de はぐくむコラム

いつもの日常って?

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新年度が始まって1ヵ月が過ぎました。新入生の皆さんは学校や大学にも慣れてきた頃でしょうか?このゴールデンウィークはしっかりと休み楽しんでください。

今から1年前の2023年5月8日を 覚えていますか?
新型コロナウィルス感染症の2類から5類への区分が移行した日です。厚生労働省からは、5類感染症への移行における今後の対応についての発表が2023年4月27日にありました。これは、行政が様々な要請・関与の仕組みから個人の選択を尊重した取組を基本とする対応に転換しました。大きく分けて
①発生動向の把握、
②医療提供体制、
③COVID-19の患者等への対応、
④基本的な感染対策、
⑤新型コロナワクチンについて、の5項目でした。

特に①発生動向の把握は、毎日の把握・公表の全数統計から毎週月曜日から日曜日までの定点医療機関による新規感染者数の報告が基本となりました。この日を境にCOVID-19に関するニュース記事は激減し、耳目に触れる機会が減りました。そして、今年の4月1日には通常の対応へ完全移行しました。
あの日から1年が過ぎようとしていた今年の3月に「新型コロナウイルス感染症感染区分移行前・後の保護者の不安に関する研究」と題した論文が「保育と保健」第30巻1号(日本保育保健協議会)に掲載されました。
これは、2023年の8・9月に新潟県内の127の教育・保育施設に協力を得て、0〜5歳児(年長)クラスの保護者を対象にアンケート調査を実施した結果をまとめた論文です。2400人を超える回答をいただきました。

区分移行前の質問は「お子さんが感染することが不安や心配でしたか?」に対して、区分移行3ヶ月が過ぎた8月
「お子さんが感染することが不安や心配ですか?」というように
「…でしたか?」「…ですか?」と対比した質問に
「全く感じなかった(感じない):1」
「やや感じた(感じる):2」
「比較的感じた(感じる):3」
「強く感じた(感じる):4」それぞれ18項目、計36の質問への回答をお願いしました。

結果は因子分析という手法を使って
1 「流行・感染リスク」、
2 「園の感染対策全般」、
3 「保護者間感染リスク」、
4 「園の運営影響」の4つの因子に分類し、平均値から比較(図1)しました。

平均値が高かったのは感染区分移行前後とも「家族や周りの人が感染した場合、お子さんへ感染すること」を含む①「流行・感染リスク」因子でした。次に「保育士や先生が感染し、園の閉鎖や欠員が発生すること」を含む④「園の運営影響」でした。②「園の感染対策全般」、③「保護者間感染リスク」が低かったことから、教育・保育施設においては不安や心配を生じさせない感染症対策が機能していたと推察できました。区分移行後は全ての平均値が有意に小さくなったことから不安や心配が軽減したと考えられました。

また、2020年の一斉臨時休業を経験した3年以上通園している保護者と3年未満の保護者の心配や不安に関して比較検証(図2)したところ、「園の運営影響」は在園期間3年以上の保護者の方が3年未満の保護者よりも有意に大きく、一斉臨時休業を経験したことによる影響があったことが示唆されました。

2020年3月に突然休校になったため【休校日だからこそ「生活習慣を大切にしましょう!」】 をコラムに特別寄稿しました。 「学校に行っていた時を生活習慣の基本として行動してはどうでしょう」 として、 ①朝の習慣を変えない。②学習時間は学校の授業時間でスケジュールを組もう。③少しでも運動不足を解消しよう!④間食は控えめに!⑤夜の習慣を変えない。 と、言うように「学校ごっこ」の延長で生活を送ってはどうでしょうと言う内容でした。

あの時はすぐに終息するであろうと考えていました。そのため「生活習慣を大切に!」休校期間を過ごしてください。との思いで寄稿しました。それが大きな不安や心配に3年も襲われるとは想像すらできなかった事を思いだします。
政府が呼びかけた三つの密(密閉、密集、密接)に神経を尖らせ、行動制限や行動様式の変化を強いられた3年間を送っていましたが、感染症区分移行後から一年経った今、街の混雑を観ると「いつもの日常」を取り戻しています。

「いつもの日常」を取り戻す。と言いつつ、子どもにとってはこの3年間が「いつも」だったことを考えると、大人が考える以上に影響があったはずです。

マスクを外すことはまだまだできない。5月に送られてくる卒業アルバムで初めて同級生の顔がわかる。名前を呼ばれても返事をしないで、挙手だけですませる。

このようなことを見聞きすると、コロナウイルス感染症の直接的な不安や心配は少なくなっていきますが、あと数年は間接的な影響を注視しておく必要があるかもしれません。

 

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。5月4日は、新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授の伊藤巨志さんです。お楽しみに!

この記事のWRITER

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授)

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授)

1964年、三条市生まれ。日本体育大学大学院修了【体育学修士】、新潟大学大学院博士後期課程修了【博士(教育学)】。子どもの身体発育発達学、運動遊び、健康教育を専門に研究。新潟市寺山公園子育て交流施設「い〜てらす」低学年広場を監修するなど、遊びの中で運動を身につける「遊育」を推奨。現在:人間生活学部子ども学科長。日本体育・スポーツ・健康学会、日本発育発達学会などに所属。
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