SDGs de はぐくむコラム

自治からはじまる、わたしたちのまちづくり

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前回、私の地域コーディネーターという仕事は何か、そこから、「あなたはどうありたいか」とういう問いかけにつなげる話をしました。
ただ、ありたい姿を実現していく時、私たちはどういうまちに暮らしたいか、生きていきたいかということも、もう一つ、大切な問いとして生まれてきます。
「まちづくり」「地域づくり」という言葉はよく聞くようになりましたが、それは、誰が担うのでしょうか。
誰かに任せるのではなく、私が関わっていく。また、誰かが関われる余白を作り出していく。
今回は、「自治」という観点から、まちづくりを少し考えてみます。

「自治」とは何か

「自治」という言葉はあまり聞き馴染みがないものです。日常生活で使うこともあまりないかもしれません。
その単語が含まれているとしたら、「自治会」でしょうか。
じつは、「自治会」はこの「自治」を実現していくための地域の要です。
「自ら」「治める」という意味の通り、誰かに指示されたり、強制されたりするのではなく、「自分たちで決めて、自分たちで担っていく」ことを指します。
自治では、自治会や町内会、NPO等の市民活動団体が主体となります。

「住民自治」の要の自治会・町内会

私たちの暮らしと最も近いところでの自治は、自治会や町内会による「住民自治」と呼ばれるものです。
昨今、自治会の加入率は下がってきていたり、悪いイメージを持っている方もいるかもしれません。
実際、自治会では、住民同士の交流を促すために、地域の運動会やお祭りを開いたり、地域の環境を維持するために一斉に草刈りやゴミ拾いをしたり、安心・安全を守るために見回りや街頭で立ったり、地域の困りごとに対して行政に要望をしたり、色々なことをしています。(余談ですが、早朝のゴミ拾いで集合時間に行くとすでに終わっているというのもよく聞く笑い話です)
私は大阪の住宅街育ちですが、自治会の子ども会が毎年夏になるとお祭りが開いたり(この機会とばかりに、かき氷を何度も並んで食べた記憶があります)、年明けにはもちつきをしたり、その当時はあまり気にしたこともないですが、地域の大人たちに見守られて育つことができていました。
これらは、誰から頼まれたわけではなく、住民自らが必要だと思うことを自分たちで決めて、自分たちのまちをよくしている行為です。
こうした積み重ねが、その地域の魅力や共助の力を高めていくことにもつながります。

住民の力で地域課題を解決する「住民自治」

さらに、「住民自治」が進んでいると言われている地域では何が起こっているかというと、行政が十分に対応できない課題に住民自ら取り組んでいることがあります。
例えば、地域にスーパーやガソリンスタンドがなくなったことから、住民たちで出資してスーパーやガソリンスタンドを経営していたり、移動の足を確保するためにコミュニティバスや福祉有償運送を行っていたり、事業として営んでいるケースもあります。
私が関わった妙高市瑞穂地区では、全住民アンケートを通じて、地域の課題を調査して、何度も話し合いを重ねて、直売所を開設しました。この取り組みがきっかけで地域の女性の活躍が進むことにもなりました。

災害時にも発揮される自治の力

そして、日常的に自治による共助の取り組みができている地域では、災害などの緊急時にも自分たちで何とかしようとする動きが生まれてきます。
行政を待たずに自分たちで重機を動かして倒木を処理して道路を復旧したり、集落で独自にボランティアセンターを立ち上げて外部の支援を募ったり、また、コロナ感染拡大の初期では、高齢世帯等に特別定額給付金の申請状況を確認して、申請までの支援を行っている地域もありました。
以前に防災・減災の観点からレジリエンス(しなやか)なまちづくりという話もしましたが、まさに、それを下支えするのは自治の力なのです。

これまで、私がコラムで取り上げてきたことは、すべてが自分たちでどのように自分たちのまちをつくっていくのか、変えていくのかを実践しているものです。
SDGsも同じで、誰か全てを解決してくれるようなヒーローを待っていても、持続可能な地域にはなりません。
私たち一人ひとりが、どういうまちに暮らしていきたいのか、何を担っていくのかを決めていくことから始まります。
これからも私は自分のできることをやっていきます。みなさんもぜひ、一緒に考え、取り組んでいきましょう。

  

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
3月11日は、地域づくりコーディネーターの石本貴之さんです。お楽しみに!

この記事のWRITER

石本貴之(三条市在住 地域づくりコーディネーター)

石本貴之(三条市在住 地域づくりコーディネーター)

1983年、大阪府生まれ。滋賀県立大学大学院環境科学研究科を卒業後、民間調査会社、環境省の情報拠点「地球環境パートナーシッププラザ」を経て、縁あって三条市に移住。新潟県内を中心に市民活動やソーシャルビジネス、SDGsを軸とした持続可能な地域づくりをサポート。一男二女のパパ。 現在:特定非営利活動法人まぢラボ 代表理事、一般社団法人全国コミュニティ財団協会 事務局長、カードゲーム「2030 SDGs」&「SDGs de 地方創生」公認ファシリテーター、総務省「地域力創造アドバイザー」など。
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