SDGs de はぐくむコラム

子どもの居場所 オンライン運動会から考える

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今回からはぐくむコラムの仲間入りをさせていただきます新潟大学の村山です。コラムを通じて、たくさんの方々と子どもたちへの想いを共有できればと思います。よろしくお願いします。

心地よい居場所
今、私は新潟市を一望できる眺めの良い場所でこのコラム執筆に向き合っています。信濃川を眼下に、左手にはビッグスワン、右手には県庁や弥彦山までもよく見えます。花壇には黄色や紫色のパンジーが咲き始め、なんとも穏やかな陽気に春を感じています。
この感覚に包まれながら一度目を閉じ、一呼吸おいてからその目を開けて周囲を見ると、改めて新潟の居心地の良さとちょうど良い自然の空気に包まれるこのまちが好きなんだと再認識させられています。
みなさんにも場所は違えど、きっと心地よい自分の居場所があると思います。
“心落ち着く自分の居場所”が。何もそれは自然豊かでなくてはならないとか、条件などなくて人それぞれです。雑踏に身を置くことで落ち着くという人もいますし、大好きな人といる場所が自分の好きな場所だという人もいます。人には人それぞれの居場所があって良く、そしてその“心地良い自分の空間”のことをコンフォートゾーンと呼び、自分にとって快適な居場所があることが大切なのです。皆さんにとってのコンフォートゾーンはどこにありますか?

地元のへの愛着と心の健康
2016年、千葉大学研究グループの報告です。地元への愛着が「とてもある」と答えた人は、「全くない」という人に比べて、うつ状態から回復した割合が2.3倍も高いという内容でした。高齢者1万人を追跡した調査結果で、地域や仲間とのつながりの強めることの重要性が示されています。ここにもコンフォートゾーンの存在がよぎります。私は思うのですが、地元への愛着にしろ、快適な居場所にしろ、幼少期の経験や体験がとても大切だということです。幼いころの体験は、その後の人生に影響すると言われていますが、人の心の育みは、人や環境との関わりです。様々な場面のなかでの豊富な体験を通じた人間形成の大切さを感じつつ、大人の私たちも子どもたちと共に学び成長できたらと思います。

オンライン運動会
2020年8月に私たちの研究室は、新潟市内の翠松保育園と笠木保育園のみなさんと一緒にオンライン運動会を開催しました。新型コロナウィルス感染症の影響を受けて、子どもたちの身体を動かす場面が突然に奪われたことがきっかけです。これまで一緒に跳びまわってきた子どもたちの身体活動が制限されることは、関わる学生たちも本当に切なかったようです。学生たちは、私たちに何かできないかと、県内初のオンラインによる運動会を提案してくれました。とてもユニークな発想に驚きましたが、学生たちの真剣な眼差しには本気度が伺え、進めることにしました。学生たちによる手作りのオンライン運動会です。

今回は、オンライン運動会の様子をお伝えしながら、運動遊びと心身の健康について考えることができたらと思います。
まず1種目目は玉入れ競争です。これまで同じ空間にいた競争相手が、オンラインを通じて画面の中にいるので一見テレビゲームのような感覚にもなります。籠に球を入れて競うルールは通常の玉入れ競争と同じなので内容も想像しやすく、応援する側も楽しい種目となりました。子どもたちは籠を目掛けて腕を大きく振って玉を投げる。何度も何度も投げる。時間いっぱいまで投げる。最後は対戦相手と一緒になって玉の数を数えては勝った負けたと大はしゃぎです。いつもの運動会のシーンが戻ってきました。

2種目目は牛乳パック積み競争です。リレー形式の競技です。スタート地点から走って目的地まで向かい、牛乳パックをどんどん積み上げて、時間内に一番高く積み上げたチームが勝ちです。これもルールはシンプルで分かりやすい内容だったのですぐに盛り上がりました。途中で崩れたらもう一度やり直しですから緊張感もありますし、子どもたちも応援に熱が入ります。画面の向こうの競争相手はどれだけ高く積んでいるのか、そして自分たちはどれだけ高く積み上げられるか、ワクワクドキドキの時間が続きます。

オンライン運動会の良さには、遠くにいるお友達の存在を知るところにもあります。まだ会ったことのないお友達が画面の先にいる。まだ行ったことのない場所があって、その場所にもたくさんのお友達がいることをオンラインで知る。画面の向こうでも一生懸命に競い合っているお友達がいる。こういう一つ一つの場面が、子どもたちにとって“つながる”ことの想像力を膨らませる時間になっていたと思います。競技が始まる前に、お互いの園の子どもたちによる歌の交換会も素敵な時間でした。私たちはこんな歌を歌えるよ。ぼくたちはこんな歌を覚えたよ。離れていても気持ちが通じ合った瞬間でした。

オンライン運動会をきっかけに始まった子ども供たちの交流
オンラインでの運動会は大成功で終えました。この様子は新聞など各メディアからも取り上げて頂きましたが、注目したいのは運動会後のお互いの園の子どもたちの交流です。お互いに感謝の言葉を模造紙に寄せ書きをして交換し合いました。その受け渡し役は学生たちです。画面を通じて交流したお友達から届いたメッセージを見入る子どもたち。その表情はとてもいきいきとしていました。

その後も、長岡市にある新潟大学附属幼稚園からも参加してもらい、第2回、第3回とオンライン運動会が開催され、子どもたちの交流の輪は広がっています。この経験や体験が、いずれ子どもたちに芽生える地域への愛着とつながり、やがてコンフォートゾーンへと高まるならば嬉しいことです。このことが全てではありませんが、豊かな経験は心の育みとなります。私たち研究室も、子どもたちと一緒に時間を過ごしながら心身の健康や社会の仕組みについて考えていけたらと思います。
そういえば、冒頭出てきた黄色のパンジーには、“つつましい幸せ”といった意味あいの花言葉があるようです。日常にある小さな幸せの積み重ねが、豊かな心の育みにつながるのならば、ちょっとした工夫で幸せに向かうことができるのかもしれません。これからは本コラムにて読者の皆さんと一緒に、日常のちょっとした事柄から小さな幸せを見つけながら、それが子どもたちの幸せにつながる考え方を共有していきたいと思います。

  

この記事のWRITER

村山 敏夫 (新潟市在住 新潟大学人文社会・教育科学系准教授)

村山 敏夫 (新潟市在住 新潟大学人文社会・教育科学系准教授)

1973年 十日町市生まれ。新潟大学工学部卒業。新潟大学SDGs教育推進プロジェクトに取り組み、SDGs未来都市妙高オリジナルロゴマーク審査会委員長を担当。出雲崎町、上越市など地域と連携した教育・健康・パートナーシップの仕組みづくりも担う。第2回にいがたSDGsアワード奨励賞受賞。
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