はぐくむコラム

子育ては落第点

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もう放送開始から10年経つ「みいつけた!」(NHK-Eテレ)という番組に、アートディレクターという立場で関わっている。「アートディレクター」という仕事…。一般的にはそれほど馴染みはないかもしれない。きっと「なにかデザインで関わっている人ね」という印象だろう。出版や広告業界においては、(僕もそのような立場で広告などに関わることもあるのだが)その言葉の通り、アートワークやグラフィックデザインのディレクションをする人のことだ。全体をイメージし、具体的なプランのもと、最終的なカタチに定着していくまでの現場監督のような存在、と言うと少しはイメージしてもらえるだろうか。

ただ、この「みいつけた!」の場合、キャラクター作りから始まり、セットや衣装のデザイン、番組コーナーのタイトルや、イベントやグッズのデザインまで、たくさんのことで関わっているので、落ち着いて「現場監督」をしているというよりは、イメージを作り出し、時には絵を描きながら、スタッフのみんなと一年中、一緒に走っているといった印象だ。

(筆者の作品の一部)

普段、子ども番組に関わっていることで、自身の子育てについての取材を受けることが時々ある。いつもその答えには困ってしまう。僕には2人の娘がいるが、日常のことは妻にまかせっきりで、”子育てパパ”としてはおそらく、落第点。週末や連休、夏休みに、ここぞとばかりに出てきては、その時だけ点数を稼ごうとする嫌な存在だ。

それでも家族で一緒に出かけた時のことを、後でみんなと思い出し、「面白かった」「楽しかった」といった子供の声を聞くと、やはり嬉しい。それは、出かけた時の天候がたまたま悪かったり、車を運転して行った目的地に迷ってしまったりなどの「あれはひどかった」「ほんと大変だった」といったネガティブな反応の時も、実は同様にちょっと嬉しかったりする。(もちろんそれが大変なことにはならなかったから、そう思えるのだろう)多少の失敗も後になればいい思い出。普段たくさんの時間を共有できないからこそ、表面的にはネガティブなことでも、忘れられない思い出を共有できることを嬉しいと思ってしまう。

(筆者)

仕事で絵を描いたり、デザインの仕事をしたりしていると、大小さまざまな失敗が必ずある。ただ、不思議とその失敗や困難の時には、それがチームでの仕事であれば結束が強くなり、個人の場合でも、それをリカバーしようとする不思議なパワーで、結果的にそれがより面白いものになったりすることが多い。だからすべて順調にいくことだけが、いいことではないと思っている。

描き直しを繰り返しながら、より良いものができるのと同様に、子どもたちもいろんな場面で、「トライ アンド エラー」を繰り返し、成長してくれたらなぁ…と勝手に思ったりする。だからちょっとした困難に見舞われることも、時にはありなのかもしれない。

大人だって、失敗や無駄を避けて、時には最初からトライせずに進みがちだが、子どもたちには、いろんなことに挑戦し、時には失敗という大事な経験をしながら、たくさんのことを学んでもらえたら嬉しい。

 

しかし普段はまかせっきり、そしてお出かけでも失敗では、完全に落第点以下。またまた、なにか挽回できることを考えなければ…。

 

5月25日(土)BSNラジオ「大杉りさのRcafe」放送予定

 

この記事のWRITER

大塚いちお  (東京都在住 イラストレーター・アートディレクター )

大塚いちお  (東京都在住 イラストレーター・アートディレクター )

1968年上越市生まれ。イラストレーター・アートディレクターとして、テレビ、CMなどのイラスト・デザインを手掛ける。子ども番組「みいつけた!」(NHKEテレ)アートディレクションを担当。連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK)タイトルバックイラストなど。子ども向けのワークショップも多数開催。2005年に東京ADC賞受賞。東京造形大学特任教授。
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