SDGs de はぐくむコラム

答えのない“なぜ”に自分なりの考えを持つチカラ

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私たちは日々の学習・仕事・子育て・プライベートといった生活の多くのシーンで「正解がない」または「正解がたくさんある」という課題に直面します。同時にスマホで検索すれば画面には答えが溢れ、またAIが答えを整理してくれる便利な時代に生きています。こんな社会を生き抜くには、問題発見力・解決力を発揮できる力がますます重要になってくるともいわれています。
2020年から2022年にかけて小中高校では新しい学習指導要領がスタートしました。学習指導要領とは、文部科学省が学校教育の中でそれぞれの教科の具体的な目標や内容のガイドラインを定めたもので、時代の変化や子ども達を取り巻く状況・社会ニーズを踏まえて約10年を目安に改訂されてきています。今回の改訂では、特に「探究的な学び」に重点が置かれました。「探究」「探究学習」を調べると以下のような説明が見つかります。
“探究とは物事の本来の姿やあり方を探り、あるいは見極めること”
“探究学習は問題解決型の学習。自らが課題を設定し、解決に向けて情報を収集・整理・分析したり、意見交換・協議したりしながら進めていく学習活動”

当館は学校の理科や総合的な学習の授業での子どもたちの利用も多く、この「探究」というキーワードは、学校の先生や体験の要望の中でも聞かれるようになっている言葉です。キョロロでは学校教育における学習のキーワードやニーズを、博物館教育と連携・連動させるソフト事業に近年力を入れており、この探究学習の要素を取り入れた体験プログラムを近年展開しています。その一つが「キョロロ生物部」という、探究型の自然体験プログラムです。

キョロロ生物部の様子 雪の上で見つけた小さな虫を調べる参加者

キョロロ生物部では、「予想する」「調べる」「考察する」という科学の考え方で、里山の生き物の謎を探究していきます。仮説を立てる、実際に調べてみる、結果を考察してみるという仮説設定とその検証体験から、科学を楽しく感じてもらうことが目的です。そして自分なりの考えで「なぜ?」に答えてみることに挑戦します。科学の考え方を楽しく学ぶ体験を通じて、子どもたちの「探究する力」の育成を目指しています。

オタマジャクシの特徴を探る

オタマジャクシの特徴を探る回のワークシート例

このイベントで用意する「なぜ?〇〇なんだろう」という問いは、研究者でも答えることが難しいものもあります。例えば、「生き物にはなぜ、似ているところ・違うところがあるんだろう?」「一握りの土の中に、何匹の生き物がいるんだろう?」「ザリガニがいる池には、他の生き物が少ないのはなぜだろう?」。このような問いに対して、毎回「観察する」「数える」「比較する」などの手法を用いながら自分自身で調べ、結果を考察していきます。

一握りの土の中に何匹の生き物がいるんだろう?

ザリガニがいる・いない池の生き物の比較

自分なりの考えを発表する参加者の子どもたち

このプログラムでは「正しい答え」を追求することよりも、「疑問を持ち、結果をもとに考える」プロセスを大事にします。結論はみんな違って良し、間違っていても良しなのです。この「予想する」「調べる」「考察する」というプロセスはノーベル賞をとるような研究者も使っている探究の王道の手法。「探究するって、面白い!」そんな感覚を自然科学館で感じてもらうことから、子どもたちの探究力を後押したいと考えています。

 

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
8月12日は、十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員の小林誠さんです。お楽しみに!

この記事のWRITER

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

1980年、長岡市生まれ。北海道大学大学院環境科学院博士後期課程修了(環境科学博士)。大学時代は北海道をフィールドに北限のブナ林を研究。現在、十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ学芸員。里山の生物多様性をキーワードに教育普及、体験交流、観光や産業などの側面から、地域博物館を活用した地域づくりに挑戦中。2児の父親。
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