SDGs de はぐくむコラム

言葉を食べる

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「こどもはね、言葉を食べて覚えるのよ」と、私が尊敬してやまない絵本の師匠が言っていた。その当時はどういうこと?と思っていた。

私は小学校と、こども園で月1回ずつ絵本の読み聞かせをしている。小学校では1,2年生の朝の時間に、こども園では、もう一人の絵本の師匠に付いて2、3、4、5歳児クラスで絵本読みと手遊びをする。選書にはとても気を使うが、楽しくて学びが多い大好きなボランティアだ。

こども園4月の2歳児さんは、まだ赤ちゃんが残っていて、読み聞かせに行くと、知らない人が来たら泣くという正常な反応で迎えてくれる。でも、ごあいさつの後には、ちゃんと座ってお話を聞くことが出来る。

4月最初に2歳児クラスで「こどものとも012 はいはいするものよっといで」(福音館書店)を読んだ。「はいはいするものよっといで」「はーいはいはい」とページをめくるたびに違う動物が出てくる絵本だ。この頃の2歳児さんは言葉も2語文が話せるか話せないかで、こちらが絵本を読むと、声は出さないが口がもごもごと動いて、お口の中にたまったよだれが口の端に滲んでくる。まるで言葉を口の中で咀嚼しているように見える。そうか「師匠、これが言葉を食べるという事ですね!」と私は思った。

毎日言葉を食べ続けた2歳児さん、1月の絵本「こどものとも012 ねむねむねねん」(福音館書店)を読むころには、「ねむねむねねん」と読むと「ねむねむねねん」と可愛い声で繰り返してくるようになる。食べた言葉が消化されて言葉として口から出てくる。この絵本も、幼い女の子が、お人形にお布団をかけて「ねむねむねねん」おもちゃにお布団をかけて「ねむねむねねん」ページをめくるごとに絵は変わるが、文章は最初から最後まで「ねむねむねねん」と繰り返されている。この絵本は、同じリズムで言葉が繰り返される。言葉を覚え始める年齢には、このリズムと繰り返しがいいようだ。

昨今、お母さん向けの講座で「しゃべらない赤ちゃんにどうして話しかけるんですか」と質問されることがある。人は生の声で語りかけることによって言葉を覚えるという。泣いたときに「おなかがすいたね~」と言っておっぱいをもらえば、これはお腹がすいたということなのだなというように、物事や気持ちと言葉を結びつけていく。人と人の関係はコミュニケーションで作られる。周りの人が「ねむいのかな」「きょうはさむいね」「ぶーぶーがとおったね」と赤ちゃんにたくさん話しかけて言葉を食べさせたら、言葉で関係性を作ることができる人に育つのだと思う。もちろん絵本にも美味しい言葉がたくさん詰まっているので読み聞かせはお勧めです。

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
10月7日は、新潟市在住 にいがた子育ちステイション理事長/子育て支援ファシリテーターの立松有美さんです。初登場です。お楽しみに!

この記事のWRITER

立松 有美(新潟市在住 にいがた子育ちステイション理事長/子育て支援ファシリテーター)

立松 有美(新潟市在住 にいがた子育ちステイション理事長/子育て支援ファシリテーター)

1960年新潟市生まれ。子育てをしながら公民館や女性財団で男女共同参画やファシリテーションなどを学ぶ。2015年、「にいがた子育ちステイション」を設立。2016年、新潟初の子ども食堂「にいがた ふじみ子ども食堂」開設。子育て支援ファシリテーターとして公民館の家庭教育学級やNobody’s Perfect等の親支援プログラムのファシリテーターとして活動。アンガーマネジメントファシリテーター 産業カウンセラー NPO法人日本ファシリテーション協会新潟サロン世話人 ほか
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