先日、大谷ファミリーに新しいメンバーが加わったという嬉しいニュースがありました。このニュースで、メジャーリーグベースボール(MLB)の産休制度「父親リスト」というものを私は初めて知りました。パートナーの出産に伴い最長72時間、チームからの離脱が認められる制度で、導入当時は賛否があったものの、今ではMLBの選手の多くが活用する制度となっているようです。アメリカでの子育てがはじまった大谷夫妻には、これからどんな新しい経験が待っているのでしょうか。
私の身内(弟夫婦)も転勤した関係で、アメリカで子育てをしています。アメリカ生まれの甥っ子(1歳過ぎ)は歩き始め、どんどん興味関心を広げている今日この頃です。そんな甥っ子の成長に会いに、1ヶ月程前にカリフォルニアを訪ねてきました。

アメリカに到着して真っ先に食べたのは「本場」のハンバーガー!
義妹(以下、妹)に「アメリカでの子育て、どう?」と聞いてみると、まず、「日本の医療は最高だよね」と返ってきました。アメリカでは、「行く病院が選べない(保険によって行ける病院が決まっている)」「予約がなかなかとれず、結局市販薬に頼るしかない」「医療が高額すぎる」とハードルがたくさんあるようです。調べてみると、日本のように公的医療保険制度がなく、国民の半数以上は雇用先が用意した民間の医療保険に入っているようです。それも、雇用先でのステータスによって保険が異なります。医療サービスを売り買いする世界であると同時に、格差があるのか、と驚きました。ただし、所得が低い方や障がいがある方等には国や州による公的医療保険の制度があるようです。もちろん、日本でも医療環境に地域差はありますが、公的な制度にはずいぶんと支えられています。私自身、息子の成長過程でこれまで、夜間の救急外来、喘息による突然の入院、ちょっと具合が悪くなったときにすぐに行ける病院があったり、心配事を話せる地域の保健師がいたり、医療や福祉(環境・制度)がそばにあることで助けられてきました。それらが身近ではない中での子育ては、やはり不安も大きいだろうと想像できます。
ほかにも、びっくりするような「リアル」なエピソードを教えてもらいました。
「出産で入院中に病院で出てきた水は氷水だった」
日本では、産前産後は特に「体を冷やすな」と言われますが、アメリカではむしろ体は温めないほうがいいという考えのようで、氷水が出てきたときには妹は「仰天した」とのことです。
「離乳食はアボカドから」
離乳食をはじめるときに担当医師から受けたアドバイスだそうです。日本だと10分粥とかにしますが、所変われば・・・。
「赤ちゃんのお風呂は週に1回」
これも担当医師から言われたそうです。欧米だと、お風呂というよりはシャワールームなのでそういった文化の違いもあるのかもしれません。

クリスタル・コーブにて。州立公園があり、ビーチ周辺は自然豊か。朝からそれぞれの時間を過ごす人がいて素敵でした。
いろんな驚きがありましたが、私自身、妹の話で一番印象的だったのが、「気楽」という言葉です。
「アメリカは多民族、多文化の国だしさ、見た目だけでなく、みんな価値観もさまざま。でもそれがかえって気楽なんだよね」と。そして、「無意識にだけど」と前置きしたうえで、子連れで飛行機に乗るときは米系よりも日系の航空会社のほうが緊張する、ということを話していました。「静かにしなきゃならない、騒いだら迷惑がかかる、と周囲を気にしてしまう。米系航空会社だとみんな自由な感じがして、安心するんだよね」と。笑いながらの話でしたが、まるで日本社会をそのまま指しているかのようで、妙に考えさせられました。
「日本人的な感覚」「自由(オープン)な国」というのは、私もアメリカ滞在中に感じました。例えば、街中や観光地では、赤ちゃんを抱っこしたりベビーカーを押したりしている同性のカップルを目にすることがありました。その時には、ジェンダー・アイデンティティをオープンにできる社会、ということに加えて、子育ては「◯◯(誰)が」しなければならない、という固定観念が崩された気がしました。
「いろんな人がいる国だから、すべてが比べようがない。違うのが当たり前だから」
そう話していた妹の言葉がすごく心に残っています。日本で子育てをしていても、このマインドは大事にしたいと思いました。なにが正解かわからないし、子育てに「正解」なんてないのかもしれませんね。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
5月3日は、にいがたNGOネットワーク国際教育研究会 RING 企画副委員長の関 愛さんです。お楽しみに!