バナナを選ぶときに、みなさんはどんなところを重視しますか。値段の安さ?形のきれいさ?または、種類でしょうか?私たちが普段スーパーで見るバナナは、見た目がほとんど同じなので「バナナに種類なんてあるの?」と思う人もいるかもしれませんが、実はバナナは300種以上あると言われています。例えば、ラトゥンダンはちょうどいい甘さが特徴で、セニョリータは小さくて甘め、中には調理用バナナもあります。これらは、先月訪問したフィリピンで実際に味わって知りました。今日のコラムでは、その中でも、日本と深いつながりがあるバランゴンの話をしようと思います。
バランゴンはフィリピンのネグロス島に自生しているバナナです。このバランゴンバナナは、実は長きに渡って、日本と「民衆交易」を通じて繋がってきたバナナでもありました。
民衆交易とは、英語で「People to People Trade」といい、人から人へ、つまり生産者と消費者が繋がりあっている貿易という意味があります。「砂糖の島」と呼ばれるネグロス島には、今から40年近く前(1980年代後半)に、世界的な砂糖価格の暴落によって人々が深刻な飢餓に苦しんだ過去があります。そうした現地の状況を救うために、日本のNGOによって「民衆交易」が始められました。単に生産者を「援助」することだけではなく、生産過程において農薬や化学肥料に頼らずに作られるバランゴンバナナは、安心・安全な食べ物を手にしたい私たち日本の消費者のニーズにも応えています。ネグロス島と日本は、民衆交易を通じて、ともに支え合う関係性を築いてきました。
実際にネグロス島の農家さんを訪問し、驚いたことがたくさんありました。まず、バナナ農園というと大規模なプランテーションを想像していましたが、小規模で、1本1本の木に手をかけながら育てていることに感銘を受けました。虫がつかないようにビニールをかけたり(袋がけ)、色が異なるビニールひもを結びつけて栽培状況を管理したり、収穫したバナナはひょいっと持ち上げて運んだり、機械や画一的なやり方に頼らない「人の手」による作業には、農家さんのバナナへの愛情も込められているように感じました。また、ある農園では、バナナの木々の間にカカオ、ココナッツ、マンゴーなど多様な果物(カカオも果物!!)も育てていました。このように栽培を工夫することで、例えば、高いバナナの木がカカオの低木に陰をつくってくれる、といったように相互作用をもたらし、収穫が収入にもつながっているそうです。農地の横にセルフビルドで建てたというカフェでは、自家製のカカオで作られたホットチョコレートをいただきました。また昼食では、はじめてバナナ料理を口にしました。料理に向いているのは「サバ」という種類のバナナだということも教えてもらいました。
手間をかけて育てられているバランゴンバナナですが、日本の港に到着後、リパッキングセンターで「規格外」としてはじかれてしまうバナナが多くあり、そのフードロスが課題となっています。日本では、APLA*1がそのような「規格外バナナ」の有効活用方法を探る「ぽこぽこバナナプロジェクト*2」を現在実施しています。規格外とはいえ、味は変わりません。まだ食べられるのに捨ててしまうのはもったいない、という精神から実にさまざまな有効活用方法がこれまでに生み出されてきました。新潟県内でもすでに、大学の教育活動や市民活動としてこのプロジェクトに手を挙げてくださっている方々がいます。現地の農家さんと交流し“リアル”を見てきた立場として、この取り組みをさらに多くの人へ伝えていくことが私の次のミッションです。
まずはみなさん、バランゴンバナナを食べてみませんか?
(参考)
*1 特定非営利活動法人APLA:https://www.apla.jp/(バランゴンバナナはAPLAのオンラインショップから直接購入も可能です)
*2 ぽこぽこバナナプロジェクト:https://poco2banana.info(バナナがどういう過程を経て日本に届くのかこのサイトから学べます)
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
2月17日は、にいがたNGOネットワーク国際教育研究会 RING 企画副委員長の関 愛さんです。お楽しみに!