2024年11月3日、私たち研究室のメンバーは南アフリカに向かって出発しました。
滞在は11月7日までで、日本に戻るのが8日です。
ラジオ収録が9日なので、この原稿は南アフリカに滞在しながらまとめています。
ネット環境など何かしらの理由で原稿を送ることができなかったらどうしようかとヒヤヒヤしながら書いていますが、もし読者の皆さんが今このコラムを目にしているとしたならば、ちゃんと原稿がディレクターの手元に届いたということなので安心しています。
何ごともなければ、9日には立石さんとスタジオで楽しいお話ができるということです。
本コラムは現地に出向いて思うがままに感じたことをメモする形で原稿にしていますことお許しください。
旅の目的
南アフリカとの交流は2024年5月から始まりました。
これまでに内モンゴル自治区、インド、キルギス共和国の子どもたちとの交流会をオンラインで開催してきましたが、一年間を通じた交流は今回の南アフリカが初めての挑戦となります。
その取り組みについては前回のコラムでもお伝えしましたが、野菜の苗植えを通じて子どもたちの成長を共有できる時間を作ったり、歌を通じてお互いの国を感じる場面を設定したりと、学生たちの様々なアイデアで交流を進めてきました。
そしていよいよ私たちが南アフリカに出向いて、現地の子どもたちと会うところまできました。
今回の目的は、海を超えて子どもたちが交流できる仕組みを作ることにあります。そのために南アフリカの状況を知り、南アフリカの子どもたちの様子を見てくることが大切だと思い、動きました。
渡航を計画し、現地での活動を計画するまでには、両国の園の先生方からはたくさんの協力を得ました。新潟の子どもたちから海外のお友だちにお手紙やちぎり絵を渡せたらという学生たちからの発案についてもご理解頂き実現しました。
こうやってひとつひとつが上手く重なり、成功に導けたと思っています。
体操で子どもたちが身体を動かしたくなる仕組み
今回の交流会では両国の子どもたちが一緒に体操を行うというのがポイントです。その体操というのが学生たちがタオルを用いて開発してきた「party体操」です。筋電図という筋肉の活動を測定できる機器や動画解析を用いて効果的な動きを取り入れて作られたのがこの体操です。単に効果的ということではなく、楽しくて効果的なことが大切です。例えばparty体操には子どもを対象にした「party体操キッズ」という種類があるのですが、これは子どもに必要な36の動きの要素を組み入れ、楽しくなるような”シャキーン”や”ニョキニョキ”といったオノマトペを加えています。こういうアイデアの全てを学生たちが考えながら開発してきました。そして体操を用いたこれまでの取り組みについては以前のコラムでお伝えしてきましたが、新潟市内にとどまらず全国各地の健康イベントなどで展開しているところです。
絵本が運動の動機づけとなる仕組み
もうひとつ身体を動かしたくなる仕組みがあります。それが絵本です。これは学生が研究してきた絵本と行動変容の成果が基になってのアイデアです。子どもたちの中には運動に対して興味関心のない子どももいます。または運動に苦手意識があるとか。大切なのは身体を動かすことが楽しい・気持ちいいということを直感的に感じてもらうことだと考えています。その手立てとして絵本を活用しようというのが学生のアイデアです。しかし都合よくそんな絵本はないので、そうなると自分で作るしかないと考えたところがその学生の凄いところです。クラウドファンディングでの資金調達を達成し、絵本の作成に取り組んでいます。
南アフリカの子どもたちとの出会い
2024年11月3日、絵本と体操を持って、いざ南アフリカに向かいました。
訪問先はヨハネスブルクにあるバナロデイケアという保育園です。バナロデイケアとは今年5月からオンラインでの交流を続けてきましたので、園長のマピツォ先生とのリアルな初対面も緊張感なくハグして喜び合いました。もし今回、日本の子どもたちを連れてきたのなら、同じ感覚だったかもしれないと思うと、例えオンラインであったとしても交流することの意味があると感じています。
そしてようやく会うことができた子どもたちからはハイタッチやハグの歓迎を受けました。
みんなが目をキラキラさせて私たちを見てくれています。優しい目と素直な表情、こんにちはと声をかけると大きな声でコンニチハと返してくれます。とても温かい空間に包まれながら、会えたことに喜びを感じる時間でした。
そういえば日本では南アフリカの留学生に初めて会った子どもたちが随分と驚いていたことを思い出しましました。初めて海外の人を見たのですから驚く反応は自然です。それと同じように、南アフリカの子どもたちも私たちに対する好奇心に満ちていたのだと思います。そしてこれから何が始まるのか、期待の表情にも見えました。
オンライン交流会
さて、日本と南アフリカの交流会についてです。
交流会は下記のように進行しました。
【交流会当日のながれ】
7時30分(南アフリカ時間) バナロデイケア到着、スクリーンなど機材設置、日本との通信接続
8時00分(日本時間は15時00分) 南アフリカと日本の子どもたちの交流会スタート
①日本の子どもたちが書いたお手紙を南アフリカの子どもたちに手渡す
②絵本の読み聞かせ(英語と日本語で読み聞かせ)
③オンラインを通じて日本と南アフリカの子どもたちが一緒にparty体操を実施する
9時00分 日本の和紙を使ったちぎり絵の体験
10時00分 子どもたちとの集合写真
まずは日本と南アフリカの子どもたちによるお手紙交換から交流会が始まりました。事前に両国の子どもたちから用意してもらっていたお手紙をオンラインでの画面越しに受け渡しをします。日本からは私たちが預かってきた子どもたちのお手紙を南アフリカの子どもたちに手渡します。
次は絵本の読み聞かせです。
今回はプロジェクタースクリーンに投影された絵本で読み聞かせを行います。日本語と英語での読み聞かせです。そして絵本に登場するタッピーというキャラクターも物語も全てがオリジナルです。体操したくなるという仕組みのひとつの絵本。タッピーが仲間たちと一緒に体操している絵を見る子どもたちからは、ワクワクしている様子が伺えます。
タッピーが猫に真似た動きをすると、子どもたちも一緒にやり始めます。花の種から芽が出てニョキニョキ伸び始めました。子どもたちも一緒にニョキニョキ、ニョキニョキ、縮んで伸びてを繰り返します。何か変身です。シャキーン!みんな一緒にシャキーンポーズです。
どんどん、どんどん、みんなが身体を大きく動かしていきます。
私たちが意図したとおり、絵本が身体を動かす動機付けになっています。
さあ、交流会の締めくくりは体操です。
絵本が動機付けとなって、子どもたちは身体を動かしたくてウズウズしています。
軽快な音楽に合わせて身体を動かす時間です。
流れる音楽は、音楽プロデューサーのヤナギマンのプロデュースとカリユシ58の前川真悟さんから作詞作曲してもらった『party』です。
日本も南アフリカも、みんなで一緒に体操する時間は大いに盛り上がりました。
スクリーンには絵本で登場したタッピーも踊っています。もうひとつのスクリーンには日本の子どもたちが踊っています。スクリーンに投影された絵本のキャラクーと日本の子どもたちがあたかも南アフリカの子どもたちと一緒にいる感覚になるのですから不思議です。
みんなで背伸びしたり屈伸したり、背伸びしたり跳んだり跳ねたり駆けまわったり。
両国の子どもたちからはもう一回やりたい!もう一回やりたい!と立て続けのアンコール。
結局3回体操しました。
これが私たちが思い描いてきた場面でした。
子どもたちの健全な発育発達には運動は欠かせません。
それを無理して行うのではなく、自発的に身体を動かしたくなる仕組み。そして一人ではなくて仲間を感じる仕組み。
この重要性を認識して、学生や両国の先生方と作り上げてきた環境です。
その意義を確認することが今回の目的でしたが、それを果たすことが出来ました。
南アフリカの先生からは月に何回かはこうやって交流したいと要望をもらいました。
手応えを感じてもらったということです。
これを機会に、今後は年に何度か南アフリカに出向くことになりそうです。
南アフリカだけでなく、アフリカ全土での展開も構想に加わり、世界の子どもたちが幸せに向かう仕組みづくりをこれからも続けていきたいと思います。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。11月9日は、新潟大学人文社会・教育科学系准教授 村山敏夫さんです。お楽しみに!
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